サウジアラビア赴任で学んだ営業に大切な姿勢

今回は、筆者が前職でサウジアラビアに赴任して日本車の販売・マーケティングに従事していた経験から、営業にとって大切だと思われることをお伝えしようと思います。

サウジアラビアの基礎情報

突然ですが、皆さんはサウジアラビアと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

おそらく、石油、イスラム教、砂漠などのキーワードだけで具体的なイメージは思い浮かばないと思います。日本ではイスラム過激派によるテロ事件がしばし報道されるため、危険なイメージが先行しますが、実は治安は安定しています。

また、サウジアラビアは建国からわずか80年程しか経っておらず、歴史の浅い国です。

ただ、1938年の油田発見をきっかけに経済的に目覚ましい発展を遂げ、石油収入で得たお金で積極投資を行い急速に近代化しています。

オイルマネーで潤っているので、税金はなく物価も安いため、サウジアラビアの人たちは比較的豊かな暮らしをしています(公務員の待遇は特に良く、空港の出入国スタンプを押す職員が高級外車に乗っていたりします)。

一方、イスラム教に最も厳格な国としても知られており、日常生活では様々な制約があります。

まず、1日5回のお祈りがあり、お祈り中にはお店はシャッターをおろし30分ほど閉店します。

また、娯楽施設はなく、現地の人々は休日にモールで買い物をするか、近郊の砂漠に出かけてキャンプをするくらいしか選択肢がありません。

そして、日本人にとっては辛いのですが、お酒と豚肉は厳禁で目にすることすらありません。

また、気候は砂漠気候で、夏期は日中40℃を超えるのに対し、朝晩は20℃以下となり1日で20℃以上気温が変わります。冬期は0℃以下に冷え込むこともあり、とにかく寒暖差が激しい気候です。

ただ、経済的観点でみると、人口の約6割を16-60歳の就労人口が占めており、GDPも人口も毎年数%ペースで安定的に成長している魅力的な市場です。

 

共通言語で話すこと、最終顧客の声を直接聴くこと

そんなサウジアラビアで、筆者は日本車の拡販に向けて、市場情報の入手・発信、現地販売会社や広告代理店との協議を通じた販促策の立案・実行を行っていました。

サウジアラビアでは自動車市場に関する統計データの公表値が存在しないため、市場動向や市場構造を把握するためには自ら足を使って現場で情報を集める他に方法がありませんでした。

日々顧客と接したり、販売会社の担当者との会話をする中に新しい発見が多く、市場動向の把握・情報の深堀のためにも現場の人と会話の機会をなるべく多く持つようにしていました。

また、文化や市場環境が日本とは大きく異なるため、最終顧客からのフィードバックを元に現地の文化・習慣に即した施策を実行する事が大切です。

そのため、人から聞いた二次情報だけでなく、どんなに忙しくても直接顧客と話して商品に対するフィードバックを定期的に貰っていました。

例えば、砂漠でのテストドライブイベントがその一例として挙げられます。

当時、筆者が扱っていた商材はディーゼル車でしたが、ディーゼル車の特徴としてガソリン車よりも燃費が良く、登坂能力が高いという2点が挙げられます。

欧州などの他市場では燃料価格が高いため、燃費が良くかつガソリンよりも安い軽油で走るディーゼル車は経済的で、消費者からも好まれます。

一方、サウジアラビアは産油国で、そもそもガソリン価格が圧倒的に安いので(ガソリン:15円/ℓ、ディーゼル:7円/ℓ※2014年当時)、消費者は燃費の良さや燃料の安さにメリットをあまり感じてくれません。(そもそも、ガソリンが水よりも安いって驚きですよね笑)

前述の通りサウジアラビアには娯楽施設が無いため、多くの人は週末に砂漠でキャンプをします(これも、販売員や顧客との会話のなかで分かったことです)。

そこで、ディーゼルの特徴である「登坂能力の高さ」を顧客に体感して貰うために、週末に多くの人が集まる郊外の砂漠で、砂丘を駆け上がるテストドライブイベントを企画・立案・実行しました。

毎週末、地方都市のさまざまな砂漠でテストドライブイベントを実施したのですが、全て同行して、筆者自らテストドライブへの呼びかけを行い、顧客から直接フィードバックを貰っていました。

日本人がアラビア語でテストドライブへの呼び掛けを行うと、現地の人々は珍しがり必ず立ち止まって話してくれます。

ディーゼルにネガティブな印象(エンジン音がうるさいなど)を持っている顧客も、テストドライブを通して登坂能力の高さに気付き、ディーゼル車に対するイメージが刷新されます。

たとえ拙くても、現地語でコミュニケーションを取ろうとする姿勢を見せることで現地人と打ち解けて、色々な情報を得ることができました。

この経験を通して、少しでも共通言語で話そうとする姿勢を見せること、そして最終顧客の声を直接聴くことの大切さを身をもって実感した次第です。

①共通言語で話すこと

②最終顧客の声を直接聴くこと

この2点は海外ビジネスでなくとも、営業の現場ではどんな事業にも共通して当てはまることだと思います。

お客さんや取引先の方と共通言語で話せるよう、業界用語はすぐに覚えることをお勧めします。

また、特にBtoBtoCの営業をしていると陥りがちですが、ついついオフィスにこもって最終顧客の声を聴かなくなってしまいます。

フットワークを軽くして、どんな現場でも実際に足を運んで顧客の声を直接聴けば、必ず新しい発見がありますので、最終顧客の声を聴く機会を持つことをお勧めします。

 

現地での予期せぬ事態

あと、当時悩まされたのが、「予期せぬ事態」です。

いくら入念に事前準備をして、直前の指差し確認作業をして、不測の事態に備えてプランDくらいまで用意したとしても、全く予期せぬ事態が頻発します。

サウジアラビアでの予期せぬ事態は枚挙にいとまがありませんが、例えば、新型車のローンチイベントを実施した際に起きた事件がありました。

当時、新型車の発表を大々的に行うため、数百名規模の会場を4ヵ月前に予約し、その会場にあわせてステージなどを特注して入念に準備していました。

ところが本番の約2週間前になって、諸般の事情により、会場を急遽使用できなくなりました(詳しい理由を知りたい方は、筆者に直接お問い合わせください笑)。

会場レイアウト、席順、スタッフ配置など全て詳細に決めて、海外からのVIP客への招待状も送付した後でしたので、本当に頭が真っ白になりました。

ただ、頭を白くしている場合ではないので、直ぐに数百名規模の会場候補を再度選定の上、企画を一から練り直して最後の最後まで各関係者と調整を続けた結果、最終的には大きな問題なく盛況のうちに幕を閉じることができました。

たとえ色々なことを想定して石橋を叩きながら渡ったとしても、橋が突然崩れたり、上から鳥に襲われたりする可能性はゼロではありません。

そんな予期せぬ事態が起きた際には、これまで積み上げてきたものに捕らわれずに柔軟に考えること、即行動すること、そして最後の一瞬まで諦めないことが重要であると痛感しました。

 

まとめ

僭越ながら、筆者の経験をもとに、営業にとって大切だと思われることを述べてきましたが、まとめると以下の通りです。

通常時の姿勢

①顧客や関係者と共通言語で話せるようにすること

②最終顧客の声を直接聴くこと

非常時の姿勢

①これまで積み上げてきたものに固執せず、思い切り捨て去る勇気をもつこと

②柔軟に考えながら即行動すること

③最後の一瞬まで気を抜かずに考えながら行動し続けること

 

最後に、現地の様子が分かる写真をいくつかご紹介します。途中、筆者の見苦しい写真もありますが、ご容赦下さい。。。

 

~週末に砂漠でキャンプの楽しむ現地人~

 

~砂漠でのテストドライブ後、その日に出会ったサウジ人の若者との砂漠キャンプ~

 

~ゴルフ場w~

 

~コースが良く分からないし、グリーンというかブラウンw~

(ブラウンに乗ったと思っても、ボールが止まらないのでこぼれるw)

 

~ショッピングモールの看板~

(女性は肌を見せてはいけないので、顔はモザイクが掛けられ、腕の色も塗られている)

 

~サウジのミスコンテストらしい、、、~

(もう何がなんだか良く分からないw)