稟議書の書き方〜稟議書を通すための5つのポイント〜

新規取引先との契約や物品購入の際に、稟議書の提出が求められることがあります。企業の規模が大きくなるほど、複数の決裁者の承認を得なければいけません。

稟議書を提出して、決裁が通らなかったり、意思決定スピードが遅かったりと悩んだ経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか?

実は、稟議書の書き方次第では、決裁承認率を上げたり、組織の意思決定スピードを加速させたりすることもできるのです。本記事では、決裁承認率と速度を上げる稟議書の書き方、5つのポイントについて分かりやすく解説します。

そもそも「稟議書」とは?

 稟議とは、物品購入や新規取引の開始など、自分の権限では決定できないことを文書にして承認を得る手続きのことをいいます。この手続きで使用する文書が「稟議書」です。

稟議書は海外にも存在しますが、海外では複数人の承認を得る必要は殆どありません。その一方で、日本では複数人の決裁者の承認を必要とし、稟議する内容は関わりが薄い人にも伝えなければいけません。そのため、稟議書は日本企業で重要となる書類です。

稟議書の目的

・会議に出席する手間を省く

稟議書の決裁者は1人とは限りません。複数部署の決裁が必要な場合でも会議を開くことなく、稟議書を回覧することで承認が得られます。決裁権を持つ人物は、さまざまな業務に追われて多忙なため、会議に出席する手間が省けると助かるのです。

・意思決定スピードが上がる

稟議が通れば、会社の決定事項として契約や購買に進めます。稟議で承認を得れば、稟議書内に記載した範囲であれば自己裁量で進めていきます。

決裁者が承認したことを忘れて「なぜ、このようなシステムを導入したのか?」と指摘した場合でも、購買稟議を見せるだけで済みます。責任の所在を明確にすることができる重要な書類です。

・稟議内容を検討しやすい

稟議内容が簡潔・明瞭に記載されていれば、内容を把握して判断しやすくなります。得られる効果を数値化して示したり、代替案より優れている点を示したりして見やすい稟議書を作成できれば、決裁者も助かります。

稟議書の用途

稟議書は用途に応じて(1)契約稟議(2)購買稟議(3)採用稟議に分類されます。

契約稟議 新規取引先と契約を締結する場合の稟議書
購買稟議 備品購入やシステム導入する場合の稟議書
採用稟議 新しい社員を採用する場合の稟議書

(参考:SmartDrive Fleet「【稟議書の必要性と書き方のコツ】車両管理システム導入時の社内処理の進め方 – その1」)

 

稟議書の特徴

稟議書のメリットやデメリットをまとめると以下の通りです。

メリット デメリット
  • 会議コスト削減
  • 事実確認の効率化
  • 承認者が検討しやすい
  • 最終承認まで時間がかかる
  • 責任所在が曖昧になる

参考:ShachihataCloud「稟議とは?制度のメリット・デメリットや必要性、稟議申請のポイントを合わせて解説」

稟議書に必要な項目と書き方

稟議書には、7つの項目を記載します。各項目の書き方にもポイントがあります。稟議書は社内で指定されたテンプレートが用意されていることが多いですが、下記のポイントを参考にしながら書いてみてください。

項目 ポイント
件名 稟議内容について簡潔に伝えます。どのような稟議書なのか、優先して承認すべきなのかを理解してもらえるように端的に記載します。
概要 タイトルの要約の役割を持つため、件名よりかは詳しく記載します。

稟議書は承認が取れた後に第三者に提出する機会もあるため、第三者が内容を把握できるように概要を記載します。

承認依頼内容 承認者が何を承認(判断)すれば良いのかを明確に知らせましょう。ポイントが明確だと、承認者は余計な手間を負わずに済みます。そのため、簡潔に承認依頼内容を記載しましょう。
目的 申請目的を記載します。購買したい物を何に使用するかを記載することで、申請意図を承認者に伝えられます。これは必ず申請しなければいけないと思わせるような目的を記載しましょう。
費用対効果 申請目的を定量的に説明します。申請を正当化する客観的な根拠があれば、承認者も納得して承認してくれるはずです。費用対効果は、簡潔に記載しておき、詳細については別添付の資料で提出する方法がおすすめです。メリットが上回るように記載しておきましょう。
想定されるリスクと対処 稟議書は粗探しされるものです。その理由は、稟議を承認することで責任が問われるからです。そのため、想定されるリスクと対処についても記載しておきましょう。
エビデンス エビデンスとは証拠・根拠を意味します。例えば、新型パソコンを購入したい場合は、既存と新規導入予定のPCのCPU速度や起動時間など、客観的に比較できる数値データを添付しておくと、スムーズに承認されます。

参考:BOXIL「稟議書の書き方 – フォーマット3選 | 例文・テンプレートですぐ使える」

 稟議書の書き方のサンプル例

件名 【オンライン商談化】オンライン商談ツール「MiiTel Live」導入の件
概要 出張費削減と営業力強化のため、オンライン商談ツール「MiiTel Live」を導入します。
承認依頼内容 営業のオンライン化。オンライン商談ツール「MiiTel Live」を導入したいので、承認をお願いします。
費用対効果 ◆費用

システム導入費はXXIDで月額XXXX円(税込)です。

◆効果

・出張費の削減(XX万円/月)

従来の営業スタイルでは、出張費がXX万円程度かかっておりましたが、オンライン商談化をすれば、余計な出張費が省けます。見込み度が高い顧客は直接訪問が必要ですが、見込み度が低い顧客をオンライン商談化することで、月間XX万円の出張費が削減できる見込みです。

・営業力の強化(XXX万円/月)

録音機能、文字起こし機能が搭載されており、営業成績が良い営業担当の通話分析をして営業力強化が図れ、かつ話した内容をAIが解析し、複数の観点から定量的に評価するため、自らのトークの改善点が見つかりセルフコーチングが可能になります。仮に成約率が5%アップした場合は、月間XXX万円の効果が得られます。

想定されるリスクと対処 ITに苦手意識のある従業員が入社をしてきた場合は、使用方法を教えなければいけません。そのため、マニュアルを作成しておきます。
エビデンス 今回、5つの製品をトライアルしてみた結果、MiiTel Liveがオンライン商談で大きな効果を発揮すると感じました。比較表は別途資料に添付しています。

稟議書に取り入れるべき視点とは?

稟議書の書き方次第で決裁が下りる確率や、意思決定スピードが上げられます。ここでは、稟議書に取り入れるべき視点について説明します。

1.「計画通り」を強調する

中長期事業計画に基づいて、年間予算計画が立てられます。年間予算計画では、今年度の目標売上を達成するための設備投資や増員について検討していきます。目標売上が未達や経費が膨らみ過ぎると、大幅な見直しを行わなければいけません。

このような事態を避けるために、予算計画は半期・四半期・月次・週次と作成していくのです。

予算計画を把握している場合は、稟議書に「計画通り」であることを記載してください。決裁者は多忙な方が多いため、計画通りで進んでいることが分かれば承認しやすくなります。

2.メリットがデメリットを上回ることを示す

稟議書にメリット・デメリットを記載しますが、メリットが上回るように書きましょう。また、メリット・デメリットは数値化で示すことが大切です。

例えば「仕事の効率化が図れます」の漠然とした表現ではなく「商談フォローアップを対面からWeb商談に切り替えることで、出張件数を60%削減することができ、出張費用を月間10万円削減できる」と具体的に表現します。導入費用よりも、出張費削減が上回れば承認が得やすくなります。

3.計画がブレたときの想定も事前に伝えておく

稟議書は、基本的に粗探しされるものだと想定しておきましょう。その理由は、稟議を承認することで責任を負うことになるからです。そのため、承認事項がもたらすプラス要素よりマイナス要素の方が注視されます。

従って、決裁者が疑問に感じる部分や反対しそうな部分を想定しておき、その対処方法についても事前に記載しておきましょう。例えば、年間予算計画がブレたときの想定も事前に伝えておくと、稟議の意思決定スピードを上げられます。

4.根回しをして決済承認のスピードを上げる

稟議書を渡すだけでは、後回しにされてしまうかもしれません。そのため、早めに確認してもらうように根回しをしておきましょう。稟議書を渡す際に、承認者と少し話をすることが重要です。

「新規取引先との契約稟議書の提出です。条件は、いつもの取引と同じです。取引先をお待たせするのは申し訳ないので、早めに決裁承認をお願いします。」と口頭で伝えます。このように伝えるだけで「いつもと取引条件は同じなら」と承認スピードが上がります。

5.決裁者の価値観や特徴を掴んでおく

決裁者の性格やクセを理解して、それらを活かした稟議書を作成すると承認が得やすいです。例えば、数字による効果測定が好きな人であれば、メリットとデメリットを数値化して、メリットが上回る根拠を示すことができれば、決裁承認率が上がります。決裁者の価値観や特徴を掴んでおきましょう。

参考:マイナビニュース「通る稟議書」に必要な6つの項目

参考:Rakuten Communications「「Web会議システム導入案」を通すための「稟議書」の作り方」

(参考:Synapse Consulting「毎年100本決裁をとり続けた稟議書の書き方5つのコツ」)

まとめ

稟議書は、社内で決められたフォーマットが用意されているはずです。しかし、各項目の書き方があるため、ポイントを押さえておきましょう。また、決裁承認率や意思決定スピードを上げるために有効な5つの視点を押さえておくと役に立つので、おさらいをしておきましょう。

稟議書に取り入れるべき5つの視点

  1. 「計画通り」を強調する
  2. メリットがデメリットを上回ることを示す
  3. 計画がブレたときの想定も事前に伝えておく
  4. 根回しをして決済承認のスピードを上げる
  5. 決裁者の価値観や特徴を掴んでおく

ぜひ、上記を踏まえて稟議書を作成・提出してみてください。

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