NTTは、2024年1月から電話回線をアナログ回線からIP網へ切り替えることを発表しました。
中継交換機が老朽化してきており、中継ルーターに切り替えていく予定となっています。中継交換機を中継ルーターにする工事は、NTT側が実施するため、企業側が行う手続きはありませんが、アナログ回線からIP網へ切り替わることで問題が発生する可能性があると言われています。今回は、「電話回線がIP網になることで何が起きるのか?」について詳しく解説します。
目次
固定電話が廃止される理由
最初に、2024年1月に固定電話が廃止されてIP電話に切り替わる理由を説明します。
固定電話サービスの加入件数が減少しているため
NTTが提供する固定電話サービスの加入件数は、毎年減少しています。
総務省『電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和3年度第4四半期(3月末))』によると、2009年度の固定電話サービスの加入件数は3,793万件でしたが、10年後の2019年度には、1,693万件と半減しているのです。半減している理由は、IP電話サービスの加入件数の増加です。
このような動きがあるため、NTTは固定電話サービスを廃止して、IP電話サービスに絞り込もうとしているのです。
参考資料:『総務省 電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表
中継交換機が老朽化して維持が難しいため
固定電話サービスの加入件数が減少したことにより、固定電話で使用されている中継交換機(交換機と交換機を接続する機器)の製造は、2015年に停止されました。
現在、固定電話サービスで使用されている中継交換機は老朽化により、2025年頃には維持が難しくなると予想されています。そのため、ISDN回線のディジタル通話モードのサービスは提供終了を迎えるのです。
補足:2024年に固定電話からIP電話へ切り替わる
2024年に電話回線はアナログ回線からIP網に切り替わると説明しました。移行の概要を説明したものが上の図です。
これまで、発信者側と受信者側の電話に繋げていた交換機を接続する中継交換機で、音声データを伝送していました。
今後は、従来のケーブルをそのまま使用しますが、発信者側と受信側の電話はIP網で接続され、中継ルーターでデータの送受信が行われることになります。
NTT側の工事により、アナログ回線からIP網に切り替わるため、固定電話がIP電話化するのです。
参考資料:『NTT IP網移行の概要』
固定電話とIP電話の違い
固定電話 | IP電話 | |
電話回線 | 交換機を伝送路で結んで通話回線を占有して使用する | インターネット回線を使用する |
通話料金 | 距離に応じて通話料金が上がる | 距離に関係なく一律料金 |
サービス内容 | 制限なし | フリーダイヤルが使用できなくなる
一部のサービスが提供終了となる |
固定電話がIP電話に切り替わると、どのようなメリット・デメリットが出てくるのでしょうか?固定電話とIP電話を比較したものが上の図です。ここでは、固定電話とIP電話の違いについて詳しく解説します。
電話回線
固定電話とIP電話は電話回線が異なります。固定電話は、交換機を伝送路で結んで通話回線を占有して通話します。
その一方で、IP電話はインターネット回線を使用して通話します。インターネット回線を使用して通話するため、発信地が特定できません。そのため、IP電話は固定電話のように市外局番を表示することができません。
かつては、IP電話の通信トラブルが問題となっていましたが、5Gの登場により通信速度が大幅にアップしたことから、通信トラブルが起こらなくなりました。
また、固定電話とIP電話の音声品質にも違いが見られなくなりました。音声品質に関しては、ほぼ同等で使用できます。
通話料金
固定電話がIP電話に切り替わると、インターネット回線を利用するため通話料を安く抑えることができます。
固定電話は、交換機を伝送路で結んで通話回線を占有して通話をしていました。そのため、発信者と受信者の距離が遠いほど通話回線が長くなり、局舎を中継しなければならないため、距離に応じて通話料金が高く設定されていました。
その一方で、IP電話はインターネット回線を使用するため、発信者と受信者の距離に関係なく通話料金が一律です。
固定電話とIP電話の通話料金を比較した表は以下にありますが、IP網に切り替えれば通話料が安く抑えられます。
サービス内容
固定電話がIP電話に切り替わると、フリーダイヤルの電話番号に通話できなくなります。その理由は、フリーダイヤルサービスは、交換機を伝送路で結んで通話回線を占有して通話しており、その料金を受信者側が払っているためです。
インターネット回線に切り替えると、従来の仕組みが大きく変わり、フリーダイアルが使えなくなります。
参考資料:『ITトレンド IP電話と固定電話の違いは?それぞれの回線・仕組みを解説!』
固定電話の廃止による問題と解決策
電話回線がアナログ回線からIP網に切り替わり、固定電話が廃止されます。
NTT東日本、NTT西日本が工事するため、企業側で手続きするものはありません。
しかし、固定電話の廃止によって問題が出てくる恐れがあるため、解決策と合わせて覚えておきましょう。
ISDNディジタル通信モードが使用できなくなる
電話回線がアナログ回線からIP網に切り替われば、ISDNディジタル通信モードが使用できなくなります。従来通りに電話サービスは利用できますが、以下のような装置は利用できなくなるかもしれません。
【ISDNディジタル通信モードの利用用途】
- POSシステム(本部と店舗間のPOS端末通信)
- CAT端末(クレジットカード会社と店舗間のカード有効性を確認するための通信)
- EDI(電子商取引におけるメーカー・卸売り・小売間での商品受注データの通信)
- 警備端末(警備会社と企業間の監視映像の通信)
- レセプトオンライン請求(診療報酬等の請求データの通信)
- 銀行ATM(銀行のセンター拠点と店舗間のデータの通信)
- G4FAX(マルチコピー複合機によるFAXの送受信)
解決策:インターネットEDIを利用する
ISDNディジタル通信モードの終了の代替手段として有力視されているのが「インターネットEDI」です。インターネットEDIへの移行は簡単ではなく、利用しているシステムによっては、ベンダーと連携して計画的に進めなければいけません。
また、インターネットEDIに切り替えてトラブルが起きても、従来の方法には戻せなくなるため、入念なテストを行って切り替えを行う必要があります。
ISDNディジタル通信モードのサービスを利用しており、各システムを利用している場合は、インターネットEDIに切り替えるための期間を確保して取り掛かるようにしましょう。
参考資料:『HITACHI ISDNが廃止に! 2024年問題について解説』
一部の電話サービスの提供が終了する
固定電話からIP電話に切り替わると、フリーダイヤルを使用できなくなります。それだけでなく、電話サービスの仕様変更や提供終了などが起こります。
電話サービスの仕様変更について、具体的な例を挙げると料金情報通知機能が変わります。従来は、通話後に通話料金が表示されていましたが、IP電話に切り替わると通話後に通話料金が表示されなくなります。
一方で、サービスが終了するものには、短縮ダイヤル(交換機に登録した電話番号を押さずに2桁の簡易発信を実現するサービス)やキャッチホン・ディスプレイ(通話中に着信があった場合に割込者の電話番号をディスプレイに表示するサービス)などがあります。
解決策:提供継続・終了サービスを確認する
NTT東日本・NTT西日本では、固定電話からIP電話に切り替えていくと共に、お客様に迷惑がかからないように提供継続/終了サービスを案内しています。
ホームページには「提供を継続するサービス」「通話料金が変更となるサービス」「一部仕様が変更になるサービス」「提供終了となるサービス」がまとめられています。
固定電話からIP電話に切り替わり、慌てないためにもNTT東日本・NTT西日本の案内を確認しておきましょう。
参考資料:『NTT東日本 提供継続/終了サービス』
固定電話の廃止に関連する詐欺が続出する
電話回線がアナログ回線からIP網に切り替わり、固定電話サービスが廃止になるだけで、お持ちの電話機器は利用できます。しかし、2024年1月に固定電話が廃止されることに関連した詐欺が増加すると予測されています。
発生しそうな詐欺には「電話機器が使えなくなる」「インターネット回線が使えなくなる」「電話料金が高くなるため、電話機器を交換しないか」などの勧誘があります。このような固定電話の廃止に関連する詐欺が続出すると予測されているため、注意してください。または、詐欺ではなくとも、不必要な機器やソリューションを売りつけようとする業者も出てくることでしょう。
解決策:騙されないように知識を身に付ける
固定電話の廃止に関連する詐欺に騙されないように知識を身に付けたり、対策を検討しましょう。以下の内容を守れば被害に遭う確率は下がるはずです。
<騙されないための工夫>
- 興味があっても話を聞くだけにして、詳しい人に相談する
- 相手の会社名を確認する
- インターネットで会社名を検索する
- 会社名を検索してヒットしない場合は契約しない
参考資料:『パソコン360 2024年、固定電話がIP電話化!これに関連する詐欺が増加の予想』
固定電話の廃止を機会に電話を見直すなら「MiiTel」
固定電話の廃止を機会に電話を見直す動きが出ています。その理由は、リモートワークなど多様な働き方を実現する動きが出てきているためです。
電話機をつなぐPBXをクラウドPBXに切り替えれば、在宅勤務者が利用するPCやスマホから、会社の代表電話番号が使用できるようになります。
クラウドPBXへの切り替えをご検討の方は「MIITel」を検討してみてください。ここでは、MiiTelの魅力を簡単に説明します。
音声品質が良い | クリアな音声品質で聞き取りやすい |
導入費用が安い | 初期費用は0円
サービス利用料は10台分で5万9,800円 |
導入スピードが早い | 最短1日でサービスが導入できる |
営業力の強化ができる | 商談内容を保存できて音声解析機能でスコアリング。
データの数値を参考にしながら営業手法の改善がしていける。 |
顧客対応の向上ができる | CRMやSFAと連携すれば、他部門と情報共有の強化ができる
トラブルが起きたときは、音声データの事実に基づいて話し合える |
リモートワークに対応できる | 日別の発信回数、平均通話時間、ステータスを確認することで従業員の稼働状況が把握できる
クラウドPBXを利用するため、在宅勤務者も利用できる |
データドリブンによる組織運営ができる | 架電数や通話内容のログにより、各従業員の制約件数の可視化ができる
経営戦略が立てやすくなる |
音声データを自動保存できる | サーバー内に音声データを自動保存できる
機器漏れやトラブルの原因の解明に聞き直せる |
まとめ
2024年1月に固定電話は廃止となり、電話回線がアナログ回線からIP網へ切り替わります。
電話回線の工事はNTTが対応することになりますが、アナログ電話からIP電話に切り替わることで出てくる問題もあります。この問題を解決するための諸手続きには時間がかかるため、内容を理解しておきましょう。
また、固定電話が廃止となることを機会に、お使いの電話サービスを見直す動きも出てきています。その理由は、多様な働き方に対応する企業が増えているためです。
AI搭載型IP電話サービス「MiiTel」であれば、多様な働き方に対応できるだけでなく、データドリブンに基づいた営業力教育や組織マネジメントが行えるようになります。ぜひ、これを機会に電話サービスの見直しを行ってみてください。