セールスイネーブルメントの意味とは?メリットや具体的な事例をご紹介

新型コロナウイルス感染拡大でリモート営業に切り替わる中でも、売上を伸ばす企業が取り組み始めているのが、セールスイネーブルメント。組織全体の売上を伸ばせるセールスイネーブルメントとは、どのようなものなのでしょうか?まずは、セールスイネーブルメントの基本概要について解説します。

セールスイネーブルメントの意味とは

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、成果を輩出し続ける人材育成の仕組みづくりをいいます。

どの企業でも営業力の強化は経営の生命線です。そのため、トップセールスパーソンのノウハウ本から、営業組織改革に関する解説本等の書籍が書店に並んでいます。しかし、結局のところ、営業社員の経験と勘次第という企業が多いのが現状です。

セールスイネーブルメントがもたらす効果は、営業社員の能力に依存しない、数字に裏付けられたデータに基づく営業組織力の強化です。社内に蓄積された営業データを活用した人材育成を行うことで、営業力向上や営業力標準化が実現できます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモート営業が進み、オンライン商談の実施など営業スタイルを見直す必要が出てきました。オンライン商談の普及と同時にインサイドセールスが普及し始め、デジタルデータを活用したオンラインプログラムを整えるセールスイネーブルメントが注目を浴びています。

セールスイネーブルメントのメリット

セールスイネーブルメントには、3つのメリットがあります。

営業力向上(平準化)

営業活動は各営業社員に任されることが多くて属人化しがちです。そのため、営業組織として再現性のある取り組みは行われていないことが多いです。しかし、セールスイネーブルメント推進で、組織全体の育成プログラムや営業ツール開発に取り組めば、組織全体の営業力向上や営業力の平準化が目指せます。

顧客の需要を明確に把握できる

顧客の価値観は多様化してきており、複雑かつ細分化しています。このような顧客の需要を明確に把握できることもセールスイネーブルメントが注目される理由です。

日本の企業でも、顧客の需要を把握するため、マーケティングが行われていますが、マーケティングで獲得した顧客が売上に繋がっているかは、営業部と意思疎通が取れないと計測できません。

マーケティング部と営業部の現状を理解できる人材は少ないですが、統合するセールスイネーブルメント部を設置することで、自社商品を求めている顧客像や、顧客の需要を明確に把握できるようになります。

施策毎の貢献度の可視化

人材育成にかかる費用対効果を計測できている企業は少ないです。日本企業は、人材育成プログラムの実施が目的となっています。本来、人材育成は営業力向上のために実施するものなので、人材育成の投資対効果の検証を行うべきなのです。

セールスマネージメントを導入すれば、人材育成プログラム実施後に効果検証のサイクルが実現するため、人材育成の投資対効果を検証できるようになります。

セールスイネーブルメントの市場規模・注目されている背景

 セールスイネーブルメントの基本概念は米国で誕生しました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大でリモート営業に移行したことで、デジタルツールを活用して、オンライン商談で契約が取れる仕組みを整えることが急務となりました。そのため、営業データを活用した育成プログラムを作る企業が増えています。

ITR「ITR Market View:SFA/統合型マーケティング支援市場2019」によると、セールスイネーブルメントツールの市場規模は、2021年度に25億円、2022年には31億円に伸びると予測されています。

セールスイネーブルメントの取り組み方 

セールスイネーブルメントに取り組んでいる企業が、株式会社セレブリックスです。

株式会社セレブリックスでは、営業コンサルティングや営業代行などを行っており、従業員数は1,300名。数多くの従業員を抱えながらも、営業力強化と平準化の実現を目指して、セールスイネーブルメントに取り組んでいます。ここでは、セレブリックス社のセールスイネーブルメントの取り組み方をご紹介します。

1.     デジタルツールを導入して営業データを蓄積する

セールスイネーブルメント導入初期に欠かせないことが、CRMやSFA等のデジタルツールを導入して営業データを蓄積していくことです。データ収集と管理こそ、セールスイネーブルメント定着に必要不可欠なのです。

初期段階で、顧客視点の営業フローの設定や営業データの管理項目設定、マネジメント層によるリアルタイム管理を可能とする環境整備をしておきましょう。

2.     顧客満足度アンケートを実施してヘルススコアを取得する

セールスイネーブルメントでは、データ収集と管理が大切だと述べました。セレブリックス社では、精度の高い人材育成プログラミングを構築するために、CRMやSFAなどで取得できる営業データだけではなく、顧客満足度アンケートを実施してヘルススコアも取得しています。

営業データとヘルススコアを併せて活用することで、売れる仕組みづくりを構築しているのです。

3.     データ解析・育成プログラムを開発

セールスイネーブルメント導入初期と同じタイミングに、セールスイネーブルメント構築を担う人材を配置します。担当者は、蓄積された営業データを分析して、全社員に浸透する育成プログラムや営業ツールの開発を行います。

企業規模や営業指標の設定方法によって、セールスイネーブルメント実施内容も変わるため、リソースに応じた適切な手段を検討しましょう。

セレブリックス社では、データ解析をするアナリストと育成プログラムや営業ツール開発を担うセールスイネーブルメント推進担当者の2名を配置しています。

4.    上記の(1)~(3)の流れを循環させる

セールスイネーブルメントで提供した育成プログラムの履歴は整理しておきましょう。データを整理しておくことで、育成プログラムの提供前後の成果が可視化できます。経営層は、実施した育成プログラムの結果、どのような効果が得られたのかを共有して、人材育成が経営に直結する仕組みを構築していきます。

セールスイネーブルメントの具体的な事例をご紹介

(1)株式会社セレブリックス

セレブレックス社においては、前掲のように積極的にセールスイネーブルメントを推進しています。具体的な取り組みについては今井氏のインタビュー記事「営業活動で誰もが売れる仕組み化を実現するセールスイネーブルメントとは?」をご覧ください。

(2)Mipox株式会社

Mipox株式会社では、Salesforce Cloudを利用することで、営業に関する情報入力を徹底。営業の行動が完全に可視化されることで、成約可能性を軸に優先順位の判断が可能となり、成約数を3年で3倍以上を実現することができました。

(3)クックビズ株式会社

クックビズ株式会社では、MiiTelを活用することで営業パーソンの活動量をこれまでの1.6倍増やすことができました。
MiiTelのデータをSalesforceと連携して、何時頃に最も多く架電しているのか、お客様に電話が「繋がりやすい曜日」や「繋がりやすい時間はいつか」を棒グラフ化し、
可視化することで営業の効率性を上げることができ活動量を飛躍的に増やすことに成功しました。具体的な取り組みについては「クックビズ株式会社 活動量が1.6倍に 営業活動が効率化し、メンバーのマインドが大きく変化 将来的には全社 MiiTel化」をご覧ください。

セールスイネーブルメントを実施する際の注意点

セールスイネーブルメントを実施する手順をご紹介しましたが、気を付けなければいけないこともあります。

単体のデータだけを見てはいけない

セールスイネーブルメントは、営業データを活用することで、成果を輩出し続ける人材に育成する仕組みづくりを指します。この営業データは、単体のデータだけを見てはいけません。データベースに蓄積された大量の営業データを解析して、売れる営業手法を見つけ出し、育成プログラムを実施することで高い効果が期待できます。

セールスイネーブルメントを実施して、高い成約率を実現するSalesforce社でも「セールスイネーブルメントが動き始めるために必要なデータが揃うのには、最低でも2年程度の期間が必要」と述べています。このように、組織全体の営業力向上や標準化を狙うためにも、大量の営業データを蓄積していきましょう。

セールスイネーブルメント推進担当を置く

営業力の強化は、営業部門やマーケティング部門で実施されることが多いです。日本企業では、セールスイネーブルメントが普及していないため、セールスイネーブルメントの経験を保有する人材がなかなか見つかりません。

しかし、デジタルデータが普及して、社内に大量の営業データが蓄積されているため、これらのデータを解析して売れる仕組みを考案するセールスイネーブルメント推進担当者は、必要不可欠な人材となるはずです。

マインド
  • 営業が好きであること
  •  営業をサイエンスすることが好きであること
  •  人の成長を支援したいと思っている
  •  営業人材開発という難易度の高い業務を担当しているというプロフェッショナルマインドを持っている
スキル
  • プログラムプランニング能力
  • 多角的な分析思考
  • 体系化スキル
  • 現場理解を得るためのコミュニケーション能力
  •  プログラムを展開して結果を出すまでの突破力
  • スピーディーな資料作成能力
  • データ分析能力
  • プロジェクトマネジメント力
  • ステークホルダーとの折衝力
知識
  • 営業理解
  • 自社の経営ニーズ/営業部門ニーズ理解
  • ビジネスフレームワーク理解
  • コンピテンシー理解
  • 人材育成手法に関するトレンド理解
  • SFA/CRF理解
  • SalesTechの動向理解

(引用元:セールスイネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方)

投資効果が見込めるデジタルツールを選定する

日本企業はデジタルシフトが遅れていたため、デジタルツールの導入が目的化しており、データを上手く活用できていません。そこで、導入目的や活用方法を具体的に考えていき、投資効果が見込めるデジタルツールを選定していくことが大切になってきます。

特に、セールスイネーブルメントはオペレーションに関わる重要基盤になるため、ツール導入が目的となると上手く稼働しません。そのため、投資効果が見込めるデジタルツールを選定しましょう。

セールスイネーブルメントを学ぶための書籍

(1)「Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術」

営業支援のトップランナーとして実績を上げ続ける会社・セレブリックス。有形無形を問わずにどんな商品でも売ってきた彼らのヒミツは、その「独自メソッド」にあります。本書はセレブリックス社今井氏がそのメソッドを1冊にまとめたものです。

(2)「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

セールスフォース・ドットコム社でセールスイネーブルメント本部長を務めた山下貴宏氏の著書。本書では、セールス・イネーブルメントに取り組みたいと考える企業が、何をどのような手順で進めればいいのか、それを進めるうえで前提として整備すべきことが何なのかについて解説しています。

(3)「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント

本書は、日本でも注目度が高まっているこの“組織変革のための規範に基づく取り組み”について、営業力強化分野の先駆的企業であるミラーハイマングループの手法を、豊富なデータやベストプラクティス事例とともに紹介した「セールス・イネーブルメント」の超実践的ガイドブックになります。

まとめ

今回は、組織の営業力強化や平準化に欠かすことができないセールスイネーブルメントについて解説しました。最後にセールスイネーブルメントについて、おさらいをしておきましょう。

[セールスイネーブルメントとは]

  • デジタルツールを導入して営業データを蓄積する
  •  顧客満足度アンケートを実施してヘルススコアを取得
  •  データ解析・育成プログラムを開発
  • 上記の(1)~(3)の流れを循環させていく 

CRMSFA・MAなど営業活動データは、社内に蓄積されており、これらのデータを活用した人材育成プログラムを実施していくことが、売れる仕組み作りに欠かせません。そのため、ぜひ、セールスイネーブルメントに取り組んでみてください。