営業DXとは”デジタルを活用した営業革新”をいいますが、営業DXで注目を浴びているものが「セールスイネーブルメント」です。
セールスイネーブルメントの登場により、誰が営業しても契約を獲得することができる「勝てる営業のルール」を生み出せるようになりました。この記事では、セールスイネーブルメントについて解説します。また、セールスイネーブルメントで判明した勝てる営業のルールについて触れているため、営業力強化をしたい方は参考にしてみてください。
目次
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、見込み顧客の獲得から受注までの営業プロセスを定量的・定性的に分析して最適化を図る手法をいいます。簡単に要約すると「営業の売れるメカニズム」を作り出すことです。
セールスイネーブルメントで判明したメカニズムを参考に行動すれば、誰でも一定以上の営業成果が出せるのです。デジタルツールの登場により、ブラックボックス化していた営業活動が可視化できるようになりました。このような背景により、セールスイネーブルメントが注目を浴びています。
セールスイネーブルメントの詳細情報に関しては、セレブリックス社のインタビュー記事「営業活動で誰もが売れる仕組み化を実現するセールスイネーブルメントとは?」が参考になるので、お読みください。
セールスイネーブルメントで判明した営業の真実
社内に蓄積されたデータをツールで解析していき、営業手法を改善していくセールスイネーブルメント。セールスイネーブルメントに取り組むと「営業の真実」が見えてきます。
新規営業の受注率は約0.4%
「新規営業の受注率は約0.4%(※1)」とは、BPOサービスを提供するセレブリックス社がアウトバウンド営業で新規開拓をした際の結果です。このように低い数値のため「新規開拓の営業は難しい…」と敬遠されているのです。アウトバウンド営業の架電先のほとんどが商品購入に至りません。
※1 ここで言及されている受注率は、電話が繋がってかつ受注ができた「コール受注率」になります。
失注原因を把握すると「勝てる営業」が見えてくる
アウトバウンド営業の新規開拓の受注率は0.4%と説明しました。新規開拓の営業は厳しいと敬遠されがちですが、顧客が商品を購入しない明確な理由を炙り出して解決していけば、商品を購入してもらえます。そのため、失注原因を明確にすれば営業改善ができて受注率を上げることができます。失注原因には以下のようなものがあります。
【新規開拓営業の失注原因】
- 顧客側に商品の魅力が伝わらず、問題が解決できるものだと思ってもらえなかった
- 他製品より高いから、価格が安い他社製品を試したいと言われた
- 製品を導入したいけれど、上司の許可が下りない
商品購入までの課題を解決する
失注原因は顧客が商品購入に至らなかった課題です。この課題を解決していけば、顧客に商品を購入してもらえます。失注原因(課題)の具体例を簡単にご紹介します。
問題 | 解決策 |
顧客に商品の魅力が伝わらず、問題が解決できるものだと思ってもらえなかった | プレゼン資料を強化して顧客に製品の魅力が正しく伝わるようにする
顧客と同じ分野の導入事例などを提示する |
価格が安い他製品を試したいと言われた | 価格が安い他製品と自社製品の違いを明確にして伝える |
製品を導入したいけれど上司の許可が下りない | 決裁権を持つ人に直接営業するようにする |
このように営業手法を改善していくことで、受注率を高めていくことをセールスイネーブルメントといいます。
(参考資料:科学的に成果をコントロールする営業術「Sales is」)
セールスイネーブルメントで判明した「勝てる営業」
セールスイネーブルメントが誕生した頃から取り組んでいたセレブリックス社では、失注原因を解析して「勝てる営業」を導き出しました。ここでは、セレブリックス社が生み出した「勝てる営業」のルールを簡単にご紹介します。
1.アカウントプランニング
商談で受注するための営業部門の計画を描いていけます。商談を有利に進めるための準備期間です。アカウントプランニングは以下の流れで行います。
【アカウントプランニングの方法】
- 商談の流れにあたりをつける:自分の経験談から、どのような商談の流れを汲むかを考える。
- 情報収集をする:自分の経験談以外の情報を集める。他の営業担当者から意見を聞いてみる。
- 仮説を構築する:ニーズが発生している要因や背景を考えてみる。
- 商談内容を決定する:仮説立てにより出てきた質問事項への回答や補足資料を準備する。
2.アプローチ
アプローチとはお客様との関係構築のプロセスです。お客様から「あなたを信用して頼りたい」と思われるポジションの獲得を目指して、提案して信用や興味を持ってもらうことが狙いです。顧客との信頼関係を構築するには、以下のステップを踏んでいきます。
【アプローチの方法】
- 受け入れやすい「第一印象」をつくる
- お客様が関心を持つ話題を提供して壁を取り除く
- 商談の目的を伝えたり、流れに合意してもらい主導権を握る
- 会社紹介やサービス紹介して顧客に共感してもらい信用してもらう
3.ファクトファインディング
お客様に商品導入や課題解決の必要性を認識してもらうプロセスです。ファクトファインディングとは、ヒアリングをすれば良いわけではありません。ヒアリングが有効な場合は、お客様に顕在的なニーズがある場合です。
しかし、お客様が課題に気付いていないことがあります。このようなお客様には、「○○をする目的はなんでしょうか?」と問いを投げかけて、潜在ニーズに気付かせる必要があります。ファクトファインディングでは、課題を一緒に見つける共同作業と認識しておきましょう。
4.オーダーコントロール
どのような提案であれば製品を導入してもらえるかを明確にするプロセスです。課題や提案の方向性が合っているかを精査します。お客様が「解決したい課題」に対して
- どのような提案であれば受け入れてもらえるのか(要件定義)
- 提案に対して誰がどのような評価基準で評価をするのか(攻略情報の確認)
- 提案を具体的に決める次のステップをどう設定するのか(ネクストアクションの設定)
を確認するための作業です。お客様と要望と営業側の提案のギャップを埋めるための工程です。
5.企画作成
お客様の課題解決を実現するストーリー(企画)を作成するプロセスです。企画書には以下の4つが含まれている必要があります。
- 顧客の課題を解決する提案になっていること
- 競合他社からの企画と比較した場合に優位性を示せる提案であること
- 課題解決の道筋や手順が一連のストーリーとして理解できること
- 合理的(実現性の証明・競合優位性)でわかりやすいこと
6.プレゼンテーション
お客様が抱える課題の解決方法と具体的なプランを披露するプロセスです。プレゼンテーションで意識すべきことは、相手により想定している課題や関心事が異なることです。下記を参考にしながら、プレゼンテーションすることを意識しましょう。
人物 | 参加目的 | 主な関心事 | 必要な商談マインド |
決裁者 | 意思決定に関わる情報収集 | ・必要な投資か?
・メリットはあるか? ・緊急度が高いか? |
企業全体にプラスとなる内容を実現可能性と競争優位性を交えながら伝える |
助言者 | 意思決定の助言に関わる情報収集 | ・必要な投資か?
・メリットはあるか? ・緊急度が高いか? |
客観的な情報を交えて、これらを使用した方が良い理由を提示する |
推進者 | ・提案内容の再確認
・社内導入の推進 |
・本当に必要か?
・出席者の反応はどうか? ・今後の進め方は? |
理想的な商談のプロセスとゴールを共有する |
運用者 | 運用フローに関わる情報収集 | ・必要な投資か
・利益は出るか ・運用できるか |
実際の利用企業での導入事例や運用TIPSを伝える |
利用者 | ・使い方の情報収集
・実際の使用感の確認 |
・使いやすいか
・便利か ・望ましい商品か |
デモ画面などを共有して実際に触れてもらう |
監査者 | セキュリティなどの情報収集 | ・セキュリティ面に問題がないか
・チェックが簡単か |
セキュリティやシステム面での安全性を裏付けるデータを用意する |
7.クロージング
最後は説得ではなく「納得」してもらい、決断してもらうためのサポートを実施します。お客様に購入の意思決定をしてもらうために、以下の4つのサポートをしてあげましょう。
【意思決定のサポート方法】
- 導入時期の仮決定と、そこから逆算して結論を出すスケジューリング
- お客様の疑問点や不安点の解消
- お客様から提示される条件(価格・納期・体制)に対する調整や交渉
- 結論の回収
8.アフターフォロー
商品を導入したら終わりではなく、アフターフォローをしっかり行いましょう。アフターフォローを手厚くしておくことで「何かあれば最初に相談される」というポジションを得ることができます。
お客様の満足度が高ければ高いほど、リピート購入や顧客紹介に派生する可能性が高まります。そのため、顧客エンゲージメントを上げることを意識しながらアフターフォローも行いましょう。
(参考資料:科学的に成果をコントロールする営業術「Sales is」)
まとめ
今回は営業DXにおけるセールスイネーブルメントで判明した「勝てる営業」のルールについてご紹介しました。勝てる営業ルールの見つけ方を身に付ければ、自社独自のノウハウを積み上げられます。誰が営業しても契約を獲得することができる勝ちパターンを蓄積していけば売上拡大を狙うことができます。
デジタルツールの登場により、ブラックボックス化していた営業手法が可視化できるようになりました。そのため、売れる営業と売れない営業の手法を比較したり、失注原因を解析したりして、勝てる営業ルールを生み出してみてください。