【製薬業界DX事例】デジタル化推進で業績を伸ばす製薬会社の取り組み

McKinsey&Companyの調査結果によると85%以上の医師がMRを介さずに情報収集ができると回答しています。さらに、コロナ禍でMRの必要性が薄れてきており、業績伸長に悩む製薬会社が出てきています。このような現状を打破するための対策方法はあるのでしょうか?この記事では、DX化推進で業績を伸ばす製薬会社の取り組みを紹介します。

参考資料:McKinsey&Company「デジタル化が至上命題となる日本の製薬会社」

 製薬業界のDX成功の鍵は「何を」「どうように」届けるか

製薬業界では、デジタルチャネルを活用した営業活動が広がりを見せていますが、希少疾患やスペシャリティ領域は対面営業が良いと言われています。さらに、医師によってWebサイト上での情報収集やオンライン会議を好むかは異なります。各医師が選好する営業手法を見極めてアプローチ方法を考えていくことが求められます。

以下の表は、医師のデジタル選好によって選ぶべき、情報収集方法と情報提供方法です。参考にしてみてください。

デジタル

選好度

情報収集方法 提供方法
・WEBサイトやチャットボットの使用ログから医師の状態を把握する

SNSデータからセグメントごとのニーズを把握する

・即時性・利便性・機能性を重視したチャネルの整備する

・論文やプレリリースの客観情報を充実させる

・オンライン会議やメールなどを通じて医師の状態を把握する

・デジタルも使うけれどMRとも情報交換でニーズを把握

・コンテンツ配信は分かりやすさを心掛ける

・医師のデジタルの受け入れ体制を重視しつつ、ウェブサイトやオンラインセミナーに誘導する

・処方データや実証化データから医師の行動を推測する ・MRをきちんと張り付けて対話をしながら処方につなげていく

・学会などマス向けのコミュニケーションでカバー

参考資料:AnswersNews「変わる製薬企業と顧客の関係|鼎談連載「DXの向こう側」(1)」

製薬業界DX推進で押さえたい3つのトレンド

製薬業界DX推進のトレンドとして「マーケティング戦略」「デジタル化推進」「新会社の設立・協業」の3つが挙げられます。ここでは、製薬業界DX推進のトレンドについて詳しく解説します。

マーケティング戦略のトレンド

製薬業界マーケティング戦略のトレンドは、オンラインとオフラインの融合です。デジタルチャネルを活用すれば24時間365日営業が行えて、使用ログデータを分析することで施策を検討できます。また、オフラインにもデータ活用が求められており、コールセンターの通話内容を分析してトークスクリプトを作成し、営業力向上を狙う製薬会社が増えてきています。

中外製薬では、月間20万人が利用する医療従事者向けWebサイト「PLUS CHUGAI」を運営しています。デジタルに強みを持つ中外製薬は、営業日報や売上データなど営業関連データを統合してAIで分析、顧客に見合うソリューションの提案ができる「顧客インターフェース」を導入しました。

統合データをAIで解析して「誰に」「どんな価値を」「どのように」を把握して、最適な施策を決定します。このような仕組みで、顧客中心のマーケティングモデルの確立を目指しているのです。

また、営業・メディカル・臨床開発・医療安全性など部門横断プロジェクトを社内で立ち上げて、製品や領域を超えた顧客中心のマーケティングをリアルとデジタルの融合で実現する活動に注力しています。

数多くのWebサイトを運用している米国ブリストル・マイヤーズスクイプでは、LINEビジネスを活用して躍進しています。医療従事者向けLINE公式アカウントを立ち上げて、製品情報やセミナー情報を提供。コミュニケーションツールのLINEビジネスに全ての情報を掲載することで、利便性を高めました。

医師側の「アプリは操作を覚えないといけないから大変」という声を参考にして、大勢の方が使用しているプラットフォームを活用するのが最善策と捉え、LINEビジネスを活用。Webセミナーを視聴する医師の獲得に成功しています。

参考資料:impress「オフラインマーケの経験を生かして「行動から顧客ニーズをあぶり出す」。120年の歴史を武器にECに挑戦する奥田製薬」

参考資料:ミクスOnline「中外製薬 営業関連データを統合・AI解析 顧客に見合うソリューションを提案 MRの行動変容も」

(参考資料:AnswersNews「ブリストル・マイヤーズスクイブが医薬品の情報提供にLINEを使うワケ」)

デジタル化推進のトレンド

AI搭載型チャットボットによる営業時間の拡大や、AI解析による高度な情報提供などデジタル化推進もトレンドです。医療従事者向けWebサイトを運営している場合は、使用ログデータから顧客ニーズを分析することができ、営業施策を立案できます。

MSD株式会社は、医療関係者向け情報サイト「MSD Connect」にAI型チャットボット「AskMSD」を搭載しました。AI型チャットボット「AskMSD」は、医療関係者が入力した質問に対してAIが回答を提示するもので、MSD製品の使用推進を目的に搭載されました。運用開始時点では、約1,500件の想定質問や回答が登録されており、運用により質問を拡充していく予定です。

AI型チャットボット「AskMSD」運用開始により、24時間365日、迅速に医薬品情報にアクセスできる体制を整えています。

米国の大手製薬会社ファイザーでは、AIで営業効率化を図っています。医療従事者向けサイト「PhizerPRO」の利用状況などのデータを集積してAI解析。AIがMRに訪問推奨する取り組みが行われています。MR訪問を希望している医師をAIが発見してくれるため、アポイント取りの必要がありません。

アポイントメントに費やしていた時間を、本来業務である訪問準備や情報提供にあて、生産性向上に繋げています。

また、従来の営業手法とは異なり、顧客ニーズをデータから分析して必要な情報を提供するデータマイニングを中心とした営業手法も主流となってきています。

エムスリー株式会社は、2020年1月には、AI活用で都道府県別の日次のインフルエンザリアルタイム流行状況情報を医師向けに提供し始めて、患者の治療計画や指導、施設の繁忙状況、薬剤在庫管理の参考になると医師から高く評価されています。

参考資料:中外製薬「AIを用いた医療従事者向け製品情報問い合わせチャットボット 「MI chat(エムアイチャット)」の運用を本日より開始」

(参考資料:MSD製薬「MSD、医療関係者向け情報サイトでAIチャットボットを搭載「AskMSDTM」として運用開始」

参考資料:ミクスOnline「デジタル技術×ファイザー」

参考資料:ZDNetJapan「IBMとファイザー、アルツハイマー病の発症をより正確に予測するためのAIモデル開発中」

参考資料:ミクスOnline「エムスリー AI活用した都道府県別かつ日次のインフルエンザ流行情報 医師向けに提供」)

 

新会社の設立・協業のトレンド

デジタル技術を活用した医療分野におけるオンライン化が急速に発展しているため、IT企業との協業や新会社を設立する製薬会社も登場しています。

中国ではワンストップ健康サービスのプラットフォームが主流となっています。オンラインでヘルスケア相談、診察、医薬品の処方が完結。医薬品が自宅に届くのため通院の必要もありません。

エーザイ株式会社は、健康サービスプラットフォームの構築を目指すため、中国の京東健康社と合弁会社「京衛享(上海)健康産業発展有限公司」を設立。健康サービスプラットフォームを開発すれば、多くの顧客の囲い込みができます。このようにIT企業と協業して医療サービスの拡充を狙うことも製薬業界DX推進に欠かせません。中国だけではなく、欧米や日本においても同様の動きがでてくるかもしれません。

参考資料:エーザイ株式会社「エーザイとJD Health 中国における健康サービスプラットフォーム構築に向けた合弁会社を設立」

まとめ

製薬業界のDX推進は加速していますが、医師側のデジタル選好度を見極め、適切な方法で情報提供していく姿勢が大切です。オフラインも従来の営業手法ではなく、医師との会話もデータ録音してトークスクリプトを作成し、成約率を上げる取り組みも始まっています。このように、オンラインもオフラインもデジタルを積極的に活用していく姿勢が求められてきているのです。ぜひ、本記事を参考にDX化の推進を行ってください。