コロナ禍で人材業界の組織力を上げる方法とは?基礎から成功事例まで解説

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人材業界の働き方は大きく変化しました。テレワークの導入や非対面ビジネスが推奨され、従来のような営業ができずに困惑する人材会社が増えています。

株式会社マツリカの独自調査「営業活動のリモートワーク調査」では、約9割の企業がテレワークに移行した結果、商談機会の数が減っていると回答。その原因として「意思疎通」「情報共有」「他部署との連携」の難しさが上げられています。組織力の低下が商談件数の減少の理由になっているのです。

その一方で、テレワークでも組織力を向上させて、商談数や契約数の獲得に成功している人材会社も存在します。これらの違いは、どこから生じているのでしょうか?今回は、コロナ禍でも人材業界が組織力を上げるための方法について解説します。

コロナ禍で人材業界が抱える3つの問題

コロナ禍で人材業界の営業方法は大きく変わりました。多くの人材会社が以下のような問題に悩んでいます。

1.コロナショックによる有効求人倍率の低下

出典元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年3月分及び令和2年度分)」

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年3月分及び令和2年度分)」によると、コロナショックにより有効求人倍率は低下しています。コロナ前の有効求人倍率は1.6倍と高い水準を記録していましたが、コロナ後には1.16倍まで下がりました。とくに、サービス業や娯楽業(14.8%減)、卸売業や小売業(12.6%減)、情報通信業(11.0%減)、宿泊業や飲食業(6.0%減)となっています。調査データから分かる通り、新型ウイルスの影響で従来のような法人営業がしにくくなっています。

(参考資料:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年2月分)について」)

2.従来通りの営業ができない

出典元:HubSpot Japan株式会社「日本の営業に関する意識・実態調査2022の結果をHubSpotが発表」

新型コロナウイルス感染拡大防止で、非対面ビジネスが推奨されました。Hubspot社の独自調査「日本の営業に関する意識・実態調査」では、顧客側が考える好ましい営業スタイルは、上記の通りになりました。新型コロナウイルス感染拡大中は、感染を懸念して、非訪問営業の方を好む顧客が多いことが分かります。そのため、従来通りの営業ができなくなり、オンライン商談など、顧客へのアプローチ方法を切り替えなければいけなくなりました。

3.テレワークが推奨されている

新型コロナウイルス感染拡大防止により、首都圏を中心に、テレワークが一時的に広く利用されることになりました。しかし、急遽実施されたため、テレワークのマネジメント方法が難しく、コミュニケーション問題などが発生している企業も存在します。テレワーク運営に課題を感じて、従来通りに営業ができず生産性が下がっているのです。

参考資料:総務省「テレワークの推進」

コロナ禍で人材業界が抱える問題の解決方法

コロナ禍で人材業界が抱える問題は、次のような方法で解決できます。

提供サービスの種類を増やす

コロナショックで有効求人倍率が下がると、求人サービスの需要は落ちます。この問題を解決するために、求人サービスに留まらない価値を提供しましょう。従業員エンゲージメント向上や従業員向け研修サービスなど、周辺領域のサービスを提供すれば、顧客が抱える他のニーズを満たせます。顧客のためにできることを社内で考えてみて、その他に提供できるサービスはないかを検討してみましょう。

例:エンゲージメント向上、教育、研修、オンボーディング、企業ブランディング、内定辞退防止、離職防止アドバイス

テレワークを活用して営業エリアを拡大する

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テレワークが普及しました。その結果、数多くの企業でオンライン商談が行えるようになりました。これは、新規開拓の観点から見ると、営業エリアの制限制限なく、アプローチができるようになったということです。

現在は首都圏より、新型コロナウイルスの影響が小さい地方の企業の採用意欲が高いです。このような地方の企業に営業をかければ新規開拓が行えます。

オンラインコンテンツを配信する

コロナ禍で人材業界の営業手法は、コンテンツマーケティングやウェビナーなどオンラインに切り替わりました。採用のノウハウをコンテンツにして積極的に配信していけば、新たな顧客接点がつくれます。以下のようなオンラインコンテンツを作成して配信していきましょう。

Before テレアポ」「展示会」「飛び込み営業
After 「企業ホームページ」「ブログ」「SNS」「YouTube」「ウェビナー」「メルマガ」

(参考資料:HRogフロッグ「【頑張ろう人材業界#03】withコロナ時代を生き抜くために人材系企業が取り組むべきこと5選」)

コロナ禍で組織力を高める方法

コロナ禍で営業手法が変わりましたが、組織力が低下して成果が出ないと悩む企業も珍しくありません。実際に、テレワークは相手の状況が見えないため、意思疎通が図りにくいとされています。このような問題は、どのように解決すれば良いのでしょうか?ここでは、人材業界における組織力を高める方法をご紹介します。

テレワークを正しい方法で導入する

テレワーク導入の成功の秘訣は、正しく導入することです。そのため、テレワークの導入方法をご紹介します。

1.全体方針を決定

テレワーク導入目的や基本方針を決定します。テレワーク導入を目的にするのではなく、何のためにテレワークを導入するかを考えてみてください。

2.現状把握

目的を認識したら、次に現状の把握をしていきましょう。目的を実現するために、現時点で足りないものは何なのかを把握していきます。「就業規則」「人事評価制度」の規則面、「ICT環境」や「業務内容」の業務面をチェックしていきます。

3.社内ルールを作成

現状把握ができたら、社内ルールを作成していきます。

  • テレワーク導入範囲:対象者・実施時間・実施頻度・実施場所など
  • 勤怠管理:始業・終業時刻の記録方法・誰に報告するか・報告方法など
  • 業績評価・人事管理:従業員が納得できる人事評価制度を策定するなど

4.ICTツールを導入する

テレワークの社内ルールを固めたら、対象者の自宅にICTツールを導入します。ICTツールの導入費用が大きな負担になるかもしれませんが、補助金・助成金が活用できます。

[ICTツール]

  • オンライン会議ツール
  • 勤怠管理システム
  • 顧客管理システム
  • コミュニケーションツール
  • IP電話

5.運用改善

テレワークを開始したら効果測定して、運用改善をしていきます。効果測定をする場合は「定量的評価」と「定性的評価」の2つの観点から測定しましょう

定量的評価 定性的評価
  • 顧客対応(対応回数・対応時間)
  • オフィスコスト(オフィス面積・賃借料・電気代)
  • 移動コスト(移動時間・移動コスト)
  • 顧客満足度
  • 従業員満足度
  • コミュニケーションの質
  • 業務改善の効果
  • 働き方の質

(参考資料:人材採用人材募集.com「【緊急:人材業界向け】新型コロナ対策で需要急増!テレワーク・リモート体制の導入方法」)

顧客の情報共有を強化する

リモートワークの生産性を上げるためには、顧客の情報共有は欠かせません。顧客の基本情報をはじめ、以下の内容を顧客管理システムに入力しておき、情報共有を強化しましょう。

経営状況 新型コロナウイルスにより売上・利益はどのぐらい打撃を受けているのか?
リモート対応の有無 リモート対応を続ける予定であるのか?
事業やサービスの方向性の変化 新型コロナウイルスにより事業計画や営業方針に変化はないか?
採用計画の見直しの有無 新型コロナウイルスで採用計画に変化はあったか?
採用や人材に関わる課題 人材採用に留まらず、人材育成やマネジメントなど人材に関わる課題を抱えているか?

(参考資料:HRogフロッグ「【頑張ろう人材業界#03】withコロナ時代を生き抜くために人材系企業が取り組むべきこと5選」)

営業のブラックスボックス化を解消する

デジタルツールの登場により、電話やオンライン商談の会話内容が自動で録音・文字起こしできるようになりました。従業員が、どのような営業をしているか可視化できるようになりました。また、AI解析により、話速やTalk・Listen率など担当者同士で比較できるようになってきています。

営業のブラックボックス化を解消するデジタルツールを導入すれば、テレワークでもマネジメントや教育が行いやすくなります。

(参考資料:パーソナルプロセス&テクノロジー「「Miitel/MiiTel Live」で実現する営業の品質向上&ブラックボックス化の解消」

稼働状況を可視化する

テレワークでは、従業員の稼働状況が把握できないという問題が発生しがちです。この問題を解決しなければ、従業員側は正当な評価を受けられるのか不安を抱いてしまいます。従業員を安心させるためにも、稼働状況を可視化しましょう。稼働状況の可視化には、PCログ管理ツールや業務支援ツールなどを活用することをおすすめします。

定期的に話し合う場をつくる

テレワークでは、相手の状況が分からないため、相談しにくいという問題が発生しがちです。そのため、定期的に話し合う場をつくりましょう。コミュニケーションツール上で雑談部屋を作成したり、オンラインランチを実施したりすることで、チームメンバーであることを認識してもらいやすくなります。

チームワーク力を上げるために、定期的に話し合う場を設けましょう。また、キャリア志向の方や業務上で悩みを抱えがちな新入社員には、1on1ミーティングを実施するのも効果的です。

(参考資料:HR大学「テレワークの雑談は重要!在宅勤務のコミュニケーションを活性化する方法」)

コロナ禍で人材業界の組織力を向上させた成功事例

最後に、コロナ禍で人材業界の組織力を向上させた成功事例をご紹介します。

フルリモートワーク制度で従業員満足度をアップ

大手人材派遣サービスのパーソルキャリア株式会社は、2021年4月に「フルリモートワーク制度」を導入しました。ライフステージに合わせて居住地が選択でき、社員のキャリア形成を支援しています。

同社は、2010年からデジタル機器の取り扱い方やセキュリティに関する社内ルールを整備してきたため、テレワーク導入が滞りなく導入できました。正しいテレワークの導入方法と社内ルールの整備を行い、多様な働き方を実現しました。

(参考資料:スマートワーク総研「コロナに負けない!在宅勤務・成功事例 【10】パーソルキャリア社員が居住地を自由に選べる「フルリモートワーク制度」

テレワークの稼働状況を把握して安心感を付与

フルリモートワーク制度を導入したパーソルキャリア株式会社では、PCログ管理と業務支援ツールで、従業員の稼働状況を的確に把握しています。

PCログ管理で、過剰な残業の抑制や情報漏洩防止を実現し、業務支援ツールでスケジュールで商談状況を可視化しています。リモートワークだと正当な評価が受けられないのではないかと不安に抱く従業員がいますが、そのような方にも配慮して、満足度の高い働き方を実現しています。

(参考資料:MiTERAS by PERSOL「テレワーク時の社員の業務遂行状況をチェックする方法とは?」)

テレワーク上でも従業員教育を実施

単発アルバイトの求人アプリを運営しているシェアフル株式会社では、リモート環境下でインサイドセールスチームの教育を行っています。各メンバーの会話内容を自動録音し「Good」「Bad」に分類。教育担当者が各メンバーに録音を聞きながらアドバイスをしています。

また、同社ではAI搭載型IP電話MiiTelを導入し、声のトーンや話速など言葉でアドバイスするのが難しい部分を数値化してアドバイス。このような教育指導により、テレワーク環境下でも営業マネジメント・指導に成功しています。

(参考資料:シェアフル株式会社「新人研修にかかる時間が2分の1に 新メンバーが当日からアポを獲得」)

まとめ

今回は、コロナ禍でも人材業界が組織力を向上させて、売上を伸ばす方法をご紹介しました。コロナショックにより、有効求人倍率が低下して、非対面営業が推奨され、訪問営業がしにくい環境となっています。しかし、このような背景を逆手にとれば、営業効率化が見込めて、売上アップも狙えます。最後に、組織力を上げる方法をおさらいしておきましょう。

[コロナ禍で人材業界が抱える問題の解決方法]

  • 提供サービスを増やす
  • テレワークを活用して営業エリアを拡大する
  • オンラインコンテンツを配信する

[コロナ禍で人材業界の組織力を高める方法]

  • テレワークを正しい方法で導入する
  • 顧客の情報共有を強化する
  • 営業のブラックスボックス化を解消する
  • 稼働状況を可視化する
  • 定期的に話し合う場を設ける

 コロナ禍で人材業界が抱える問題を解決していき、組織力を高め営業力を上げれば、商談件数や契約数を増やすことができるでしょう。ぜひ、これを機会に、テレワークやオンラインツール導入がきちんと行えているのか?社内ルールが整備されているか?を見直してみてください。