[製造業]営業プロセスの分業化に必要なコミュニケーション強化法

 製造業でも複雑な顧客ニーズに対応するために、営業プロセスの分業化が行われ始めています。

  • 営業企画部門/マーケティング部門:マーケティング施策等で見込み顧客を獲得する
  • インサイドセールス部門:見込み度に応じた適切なコミュニケーションによって関係を深め商談化させる
  • 営業部門:見込み顧客から製品の受注を獲得する

営業プロセスの分業化を成功させるためには、他部門間のコミュニケーションが欠かせません。今回は、製造業の営業プロセスの分業化の方法と部門間のコミュニケーションのコツについて解説します。

製造業の営業組織(1)営業企画部門/マーケティング部門

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、製造業の営業活動はオンライン化が加速しており、Webマーケティングによる見込み顧客の獲得が必要不可欠となりました。

製造会社は新規開拓のためにWebマーケティング施策を考えなければいけませんが、どのようなマーケティング施策があるのでしょうか?ここでは、営業企画部門/マーケティング部門の役割から施策まで解説します。

役割:見込み顧客の獲得

営業企画部門/マーケティング部門の役割は、新規顧客の開拓や見込み顧客の獲得です。

製造会社は既存顧客からの受注に頼っていますが、デジタル技術による既存ビジネスモデルに影響を及ぼす新興企業の台頭、新型コロナウイルスによる予測不能なサプライチェーンのリスクなど取り巻く環境は急速に変化しています。

このような問題に直面した場合でも安定的な経営をしていくために、新規顧客を開拓していかなければいけません。営業企画部門/マーケティング部門はオンラインとオフラインのマーケティング施策を行い、見込み顧客を獲得する役割を担います。

(参考:ITmedia「製造業のマーケティング施策 現状の課題から戦略事例まで解説」)

マーケティング施策

営業企画部門/マーケティング部門は見込み顧客の獲得のために、マーケティング施策を考えなければいけません。

[製造業のマーケティング施策]

  • BtBデータベースサイト(イプロス、アプレザ等)への出稿
  • メルマガ広告
  • バナー広告
  • SNS広告
  • ターゲティングメール
  • ダイレクトメール
  • メディアへの記事掲載
  • オンライン展示会出展

マーケティング施策には上記のようなものがありますが、その中でもおすすめの施策が「オンライン展示会」です。その理由は、オンライン展示会は複数企業が出展しているため、大規模な集客が見込みやすいためです。

自社単独の集客力に自信はないが、多くの見込み顧客を獲得したいと考える会社に適した施策です。オンライン展示会には、多くの参加者が訪れているため、参加者目線で役立つコンテンツを用意しておきましょう。

(参考:ITmedia「製造業のマーケティング施策 現状の課題から戦略事例まで解説」)

製造業の営業組織(2)インサイドセールス部門

新型コロナウイルスの感染拡大により、顧客への対面営業が行うことが難しくなりました。また、リモートワーク中心になったことにより、営業や問い合わせで連絡が取りづらくなりました。こうした背景から、メーカー各社においてはインサイドセールス部門を立ち上げる動きが出てきています。ここでは、インサイドセールス部門の役割や運営方法まで解説します。

(参考:BRIDGE「【製造業編】インサイドセールスの向いている業界・業種」

役割:見込み顧客の育成

インサイドセールス部門は、見込み顧客が求めている情報をメールや電話で提供して関係を構築する役割を担います。

インサイドセールス部門を立ち上げて、見込み度が低い顧客の育成に専念することで、営業部門は本来の営業目標である受注に専念ができるようになります。このような営業の分業化が注目を浴びており、インサイドセールス部門を立ち上げる企業が増えているのです。

(参考:Urumo!「リードナーチャリングにおけるインサイドセールス活用法」

インサイドセールスの手法

インサイドセールスを行う方法は以下の通りです。

  1. 営業企画部門/マーケティング部門が獲得した見込み顧客の情報を一元管理する
  2. 見込み顧客の優先順位を付ける
  3. 見込み顧客にアプローチをして良好な関係を構築する
  4. 見込み顧客をスコアリングする
  5. 見込み度の高い顧客を営業部門へ引き継ぐ

インサイドセールス部門が見込み度の低い顧客の育成を行うことで、営業部門はコア業務に集中できるようになります。 

製造業の営業組織(3)営業部門

営業部門は、顧客の要望や課題をヒアリングして問題を解決する提案をし、製品を受注していきます。ここでは、営業部門の役割や営業手法まで詳しく解説します。

役割:製品の受注

製造業はモノづくりを重要視して、営業に力を入れない傾向があります。

しかし、営業部門の強化を図らなければ、顧客の新規開拓は行えません。何故なら、製造技術の目覚ましい発展により、メーカー別の機能の差がなくなってきており、顧客は昔ほど製品の性能に魅力を感じなくなってきているからです。そのため、営業部門は顧客が抱える要望や課題をヒアリングして、解決方法を提案し製品を受注していく役割を担います。

営業手法

営業部門は(1)ヒアリング(2)提案(3)クロージングを実施して製品を受注していきます。

(1)  ヒアリング

営業のヒアリングでは「BANT」と呼ばれるヒアリングフレームワークが利用されることが多いです。

Budget(予算) どの程度の予算を想定しているか?
Authority(決裁権限) 今回の商談に関して最終決裁者は誰か?
Needs(必要性) 顧客がどのような課題を抱えており、商材を通じてどのように解決したいと考えているのか?
Timeframe(導入時期) 導入時期はいつか?

(2)  提案

顧客が抱える要望や課題をヒアリングできたら、具体的な解決方法を提案します。営業の提案で一番大切なことは、顧客のニーズや課題に応えた解決法を提示することです。そのため、お客様視点に立つ必要があり、相手の視点に立つことで初めて見える課題があります。解決案を提示したら商品説明、トライアルを薦めてみてください。そのような流れを作ることで信頼度が上がります。

(3)  クロージング

提案後は製品を受注するために、顧客の背中を押すためのクロージングをしましょう。クロージングには3つのコツがあります。 

・テストクロージングする

商談中に顧客が商材に興味を示しているのか、購入の意思があるかを確認する。

例)紹介した製品の中だと、御社に一番向いている製品はどれになるでしょうか?

製品導入後をイメージさせる

クロージングにおいて、製品導入後をイメージさせることが大切です。製品導入後に自社が抱えている問題を解決できるかを考えさせてみてください。

例)課題になっている○○の改善のために、製品の導入を進めてみませんか?

選択肢を与える

顧客側は損をしたくないという気持ちを抱えているものです。クロージングをする際は、このような顧客心理を汲み取る必要があります。そのため、顧客に選択肢を用意して、自分で選択肢を選んでもらいましょう。自分自身で選んだという感覚があると、より納得感のある形で購入してもらえます。

例)○○と○○であれば、どちらを希望されますか?

(参考:VCRM「クロージングとは?営業で成約率を上げるためのテクニック厳選3つ・例を紹介」)

[製造業]営業組織のコミュニケーション上の注意点

営業プロセスが分業化されている場合、3つの部門間でコミュニケーションをとる必要がありますが、上手くいかないことが多いです。失敗を防ぐために、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?

部門間連携が不可欠

営業プロセスの分業化を成功させるためには、部門間連携が必要になります。その理由は、営業プロセスを分業化する際に、引き継ぎ作業が生じるためです。

例えば、見込み度が上がった顧客をパスする場合には、インサイドセールス部門から営業部門へ顧客に関する情報を伝達しなければいけません。伝達不足のミスを防ぐためにも、部門間の連携が必要になります。

営業プロセスを分業化するためには、部門間連携が必要になるため、CRMやAI搭載型IP電話などのデジタルツールを導入して情報共有をしましょう。

その理由は、顧客情報を引き継ぎたくても相手が営業中で連絡ができないなど、タイミングが合わない場合があるためです。

デジタルツールで顧客情報や進捗状況を入力しておけば、各自が都合が良いタイミングで顧客情報にアクセスできます。多くの情報を残しておけば、部門間連携ミスが減らせます。商談内容や録音電話などのデータも残しておくと安心です。

全体最適が必要

全体最適を考慮せずに各営業プロセスの中でKPIを設計してしまうと、成果が上がりづらくなってしまいます。全体最適になるようなKPIの設定を心がけてください。具体的な設計方法については「インサイドセールス部門のKPI設定方法!項目からポイントまで解説」およびホワイトペーパー「インサイドセールスの KPI設定のポイント」をご覧ください。

参考資料:SalesHacker「SaaS業界で営業プロセスの分業化が加速!メリット・デメリットを解説」

 

営業プロセスの分業化が実現できている大手企業の事例

営業プロセスの分業化は、大手メーカーにおいてはすでに実現されています。以下具体的な事例について説明します。

アンリツ株式会社

スマートフォンや携帯電話の基地局などに使われる通信用計測機器の大手のアンリツ社においては、日本国内のモバイル通信機器メーカーの生産は近年縮小傾向にあるため、国内営業活動において、営業の効率化および他部門との連携が求められていました。そのため同社では、CRMを営業部門を起点に、営業企画部門/マーケティング部門、サービス・サポート部門、インサイドセールスへと本格的導入をし効率化を図ることができました。その後、さらに発展させ、マーケティングオートメーションを新しい営業手段として活用することで『勝率アップ』と『セールスサイクルの短縮化』を図ろうとしています

(参考資料:https://a.sfdcstatic.com/content/dam/www/ocms/jp/assets/pdf/misc/manufacturing-industry.pdf

 

3M Company

工業製品・事務用品のグローバル企業スリーエム社においては、2014年にアメリカでインサイドセールスチームを立ち上げ、その後250人以上のチームになりました。セールス・エンゲージメント・プラットフォームを活用することにより、販売プロセスの明確化とチーム内のコミュニケーションの活性化が実現、生産性が向上し、コロナ禍であるにもかかわらず業績を伸ばすことができました。

(参考資料:https://salesloft.com/resources/case-study/3m-enhances-its-inside-sales-process-with-salesloft/

 

シュナイダーエレクトリック

フランスに本社を置く世界的な電機メーカーで、従業員16万人を擁するシュナイダーエレクトリック社においては、CRMを導入したことで顧客のニーズをより的確に予測できるようになりました。さらには、製品情報を含むすべての顧客情報を組み合わせることで、新製品およびサービスの開発につながるインサイトを収集し、クロスセルの向上を図ることができました。営業効率の可視化、ビジネスユニット間のコラボレーション、社内コミュニケーションの改善ができたことで営業効率が上がりました。

(参考資料:https://www.salesforce.com/content/dam/web/ja_jp/www/documents/customer_stories/schneider-electric.pdf)

(参考資料:https://www.marketone.com/articles/schneider-electrics-model-supercharging-sales-marketing-mandy-wallace-s1-ep5

 

まとめ 

製造業においては製品の陳腐化が進み競争が厳しくなってきており、顧客ニーズに対応した営業活動をしなければ、製品の受注が難しくなってきています。そのため、営業企画部門/マーケティング部門、インサイドセールス部門、営業部門で連携して顧客ニーズに適した対応をしていかなければいけません。営業プロセスを分業化する場合、他部門連携や適切なKPIの設定が必要になります。是非とも営業プロセスの分業化に挑戦してみてください。