コロナに立ち向かうための組織&経営戦略の見直し方

帝国データバンク「 新型コロナウイルスによる企業業績への影響調査(2020年度)」の調査結果では、新型コロナウイルスの影響で売上が減少したと回答した企業は約6割という結果になりました。新型コロナウイルスは変異種が登場するなど不確実な要素が多い外的要因です。

しかし、企業は不確実な要素の外的要因に立ち向かっていかなければいけません。Withコロナでも経営が維持できる施策を検討していき、POSTコロナでは業績を伸ばせる施策も検討していく必要があります。そのために、現在の組織や経営を見直しましょう。この記事では、コロナに立ち向かうための組織の見直し方&経営戦略の見直し方をご紹介します。

新型コロナウイルスが企業に与えた影響

新型コロナウイルスは、各企業に大きな影響を与えました。コロナ禍のフェーズは大きく「VSコロナ(バーサスコロナ)」「Withコロナ」「Postコロナ」に分類できます。新型コロナウイルスにより、企業を取り巻く環境はどのように変化したのかを把握して、今後の組織の在り方や経営戦略を見直してみてください。

(※本記事においては、2021年10月現在をWithコロナのフェーズと定義づけています。)

VSコロナ

フェーズ
  • 緊急事態宣言が発表されて経済活動が急速に減速・停止している状態
環境変化
  • 緊急事態宣言が発表されて外出自粛が余儀なくされる
  • サプライチェーン停止やイベント中止などによる経済停滞する
  • 密閉・密集・密接を避けるためにテレワークが推奨される
  • (※オンラインツールの活用が必須となる)
企業の課題
  • 売上減少や売掛債権の回収遅れで資金繰りが悪化する
  • 業種によっては人員削減や在庫調整が余儀なくされる
  • 感染症対策の実施が余儀なくされる

Withコロナ

フェーズ
  • 緊急事態宣言は解除されたが、新生活様式や外出自粛が続く状態
環境変化
  • 制限されていた企業活動の再開できる
  • 働き方の多様化や三密回避のオンラインサービスに需要が高まるなど人々の価値観が変化する
企業の課題
  • 感染症対策を織り込んだ事業計画が求められるようになる
  • テレワークの体制を整えるためルール化しておく

Postコロナ

フェーズ
  • ワクチン接種により従来のような社会活動が可能になる
環境変化
  • Withコロナで定着した価値観が社会にも定着して、下記の形態がさらに広がる
  1. オンラインサービス
  2. 多様な働き方
  3. 非接触による手続き(電子契約・顔認証・電子決済など)
企業の課題
  • コロナ感染拡大のリスクを織り込んだ事業計画を着実に実行する
  • Withコロナで誕生した価値観に対応する「攻め」の事業を展開する
  • 新事業の展開や新たな制度への刷新が求められる

上記の3つのフェーズから分かるように、新型コロナウイルスに対応する組織体制と、顧客や従業員の新たな価値観にアプローチする新事業・新人事制度を計画していく必要があります。

参照元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ポストコロナ期における中堅中小企業の経営課題」

 Withコロナの組織の見直し方

Withコロナのフェーズで外的要素に負けない組織強化(レジリエンス強化)をしていく必要があります。下記の該当する7つの項目を見直していきましょう。

1.職場の安全衛生対策

職場の安全衛生対策として、業務オペレーションとオフィスのリデザインが必要となります。

業務オペレーション改革

コロナ禍で総務部・経理部・人事部に求められる業務が増えました。そのため、定型業務の生産性を高めて、コア業務に集中することが求められています。定型業務の生産性をどこまで上げられるかは、企業の大きな課題です。

『クラウド』『デジタル』『ペーパーレス化』『RPA』をキーワードに定型業務を効率化して、業務オペレーション改革をしていかなければいけません。

オフィスをリデザインをする

コロナ禍で働き方は多様化してきましたが、オフィスはコミュニケーションを取る場所として存在意義が明確化されました。オフィスであれば相手の状況や表情を確認できるため、質の良いコミュニケーションが行えます。のため、働き方は多様化してもオフィスは必要です。

新型コロナウイルスの影響により、フレキシブルな空間のオフィスに注目が集まっています。『フリーアドレス』『ABW』など、従業員であれば誰でも使用可能な空間に注目が集まっていまるのです。また、3密を回避するために広めのオフィスが選ばれていたり、オフィスを分散したりなどの動きも出てきています。

※フリーアドレス:個人専用のデスクではなく、フロアに誰でも利用できる机と椅子を設置していること

※ABW:『時間』と『場所』を自由に選択できる働き方のこと

2.従業員の心身のケア

コロナ禍でテレワークが推奨されました。このような環境で浮き彫りになった問題が『テレワーク疲れ』です。仕事とプライベートの切り替えができずに心身が休まらないと、体調不良になる従業員もいます。

また、テレワークはコミュニケーション不足に陥りがちで、疎外感を抱く従業員もいます。そのため、従業員の心身のケアをしましょう。近頃は従業員のメンタルヘルスを実施するためのストレスチェックツールが登場しています。従業員の健康管理も企業の責任として問われてくる恐れがあります。したがって、従業員の心身のケアを行えるようにしておきましょう。

3.柔軟な働き方の実現(リモートワーク、テレワーク等)

コロナ禍でテレワークに取り組む企業が増えましたが、テレワークを継続したいという従業員も出てくるでしょう。小さなお子さまを育てている方は、育児と仕事を両立させる方法としてテレワークを希望してくるかもしれません。

従業員が求める柔軟な働き方を尊重していき、優秀な人材を獲得していく時代を迎えていきます。そのため、テレワークの環境整備を整えて勤務制度を作るなど、柔軟な働き方ができる体制を整えていく必要があります。

4.ジョブ型の人事制度の採用

働き方の多様化を認める場合、テレワーク勤務者などの人事評価は正しく行わなければいけません。しかし、テレワークの従業員の働き方は確認しづらいです。このような環境下の人事制度として『ジョブ型人事制度』に注目が集まっています。

ジョブ型人事制度とは、会社に必要な職務と価値を明確にして達成度に応じた報酬を支払う制度です。営業部やマーケティングなど結果を数値化しやすい職種では採用しやすくなっています。

数値かが難しい職種でジョブ型人事制度を採用する場合は、OKRや1on1を実施して目標管理を高度化する必要があります。

5.時代に応じた組織マネジメント

新型コロナウイルスはビジネスに大きな変化を与えて、働き方の多様化を認めざる得なくなりました。そのため、新しい働き方に即した組織マネジメントを実施していく必要があります。

経営者は経営マネジメントの改革を行い、今後の人事採用で求める人材像を明確にしておきましょう。また、オフライン・オンラインでも従業員教育が行える体制を整えていく必要があります。

6.デジタルツールを活用した営業力強化

新型コロナウイルス感染拡大の影響により非接触が推奨され、オンラインツールが活用されるようになりました。デジタルツールはテレワークに対応するための手段だけではなく、商談データを録音して解析することで営業力強化が図れます。

近年では、CRMやSFAをはじめ、AI搭載型音声ツールなど営業力強化に役立つツールが登場しています。これらを上手く活用して営業組織を強化していきましょう。

7.経営資源の最適化

新型コロナウイルスの打撃を受けて大きく売上減少した企業は『新分野展開』『業態展開』『事業再編』を行う必要があります。外部環境に負けない事業を検討していかなければいけないからです。そのため、POSTコロナの組織体制の強化として経営資源の見直しをしましょう。

8.人事調達方法の最適化

人材採用も新型コロナウイルスの影響で大きく変わり、通年採用(企業が年間を通して、必要性に応じて自由に採用活動を行うこと)が通常となりました。従来のような新入社員の一括採用は終わりを迎えようとしています。

また、必ずしも社内人材を活用しなければいけないという価値観は薄れており、社外人材やフリーランスを積極的に活用する企業が増えています。そのため、人事調達方法を見直しておきましょう。

参考元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「With&Post コロナ時代の組織・人事ソリューション」) 

 Withコロナの経営戦略の見直し方

新型コロナウイルスは不確実な要素の多い外的要因で、ビジネスに大きな歪をもたらします。そのため、企業は外的要因への対応力強化(レジリエンス強化)をしなければいけません。対応力強化の内容については、前の項目で説明しました。実際に、それぞれの項目をどのように見直していけばよいのでしょうか?次に、組織の見直し方と経営戦略の見直し方をご紹介します。

1.ビジョンを見直す

最初にPOSTコロナを見据えたビジョン・経営戦略を見直しましょう。コロナ禍で浮き彫りになった、自社の強み・弱みを洗い出して企業の価値観や将来ありたい姿を思い浮かべてください。ビジョンを明確にするために、以下の4つの項目を具体的に検討していきましょう。

WANT 今後やりたいこと
MUST 社会のためにやらなければいけないこと
LIMIT やらないこと・廃止したいこと
CAN 環境と資源を活用すればできること

2.成功要因の仮説を立てる

ビジョンを策定したら、実現できるか仮説立てをしていきましょう。『商品力』『営業力』『生産力』『開発力』『人材力』『育成力』などの多方面から、ビジョンを実現していく際に問題が発生しないかを考えていきます。

とくに、おすすめの仮説立てが顧客情報を分析する方法です。自社商品の購入者の属性を分析すれば、自社に求められていることが明確に可視化でき、成功要因の仮説立てが具体的に行えるようになります。

3.目標数値を設定する

ビジョンを策定して仮説立てを終えたら、実際に行動に移していくために目標(KPI)を策定していきます。目標は数値化して可視化できるようにしてください。目標を数値化することで、各部門の貢献度が分かるようになり、どこに投資すれば良いかが判断できます。

しかし、高すぎる目標数値を設定するのは控えましょう。少しずつ目標の数値を上げていくことが大切です。

4.アクションプランを策定する

次に各部門(各従業員)のアクションプランを策定します。『誰が』『いつまでに』『誰と』『どのように』『どのぐらい』などの業務に関する内容を詳細に決めていきます。各従業員にも数値化できる目標を策定してください。ジョブ型人事制度の指標となるからです。

参照元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ポストコロナ期における中堅中小企業の経営課題」

 まとめ

今回は、POSTコロナに向けての組織の見直し方&経営戦略をご紹介しました。不確実な要素が多いコロナの外部要因に適応するための組織強化(レジリエンス強化)は欠かせません。以下の項目をチェックして、組織体制などを見直してみてください。

  1. 職場の安全衛生対策
  2. 従業員の心身のケア
  3. 柔軟な働き方の実現
  4. ジョブ型の人事制度
  5. 時代に応じた組織マネジメント
  6. デジタルツールを活用した営業力強化
  7. 経営資源の最適化
  8. 人事調達方法の最適化

新型コロナウイルスは不確実な要素を含んでいます。しかし、このような不確実な要素に満ちた外部要因にも負けない組織を作ることが必要です。ぜひ、これを機会に組織や経営戦略を見直してみてください。