フィードバックとは、シチュエーション毎に捉え方は変わりますが、ビジネスの場面では部下の行動に対して評価をして、軌道修正を促すと捉えることができます。上司は部下の行動を正しく評価して、客観的なアドバイスをして成長を促す必要があります。正しくフィードバックをすれば、部下のモチベーションが上げられて、スキルアップに繋げることも可能です。また、部下との信頼関係も深まります。
しかし、フィードバックの方法を間違えると効果は見込めません。一体、どのようにフィードバックをするべきなのでしょうか?この記事では、正しいフィードバックのやり方について、具体的に説明していきます。
74%の部下が質が高いフィードバックを受けられていない
コンサルティング会社のGALLUP社の調査レポート「Feedback Is Not Enough」では、従業員の約75%が上司のフィードバックが欲しいと望んでいます。従業員は成長意欲があり、業務上の行動のどこを改善すべきか教えて欲しいと思っているのです。
しかし、実際に上司からフィードバックを受けている部下の74%が「フィードバックは役に立たなかった」と回答しています。多くの人がアドバイスを求めているにも関わらず、有効的な助言を得られていないと悩んでいるのです。このような問題は、質の高いフィードバックができていないことが原因で起きています。
質の高いフィードバックで活用できる5つのフレームワーク
部下にとって役立つフィードバックとは、どのようなものでしょうか?次項では、質の高いフィードバックを実践するための方法について紹介していきます。まずは、フィードバックで活用できる5つのフレームワークについて解説します。
1 | 部下に納得感を与える | SBI型 |
2 | 部下の行動を改善させられる | FEED型 |
3 | チームの振り返りに活用できる | KPT型 |
4 | ネガティブな情報を伝えられる | サンドイッチ型 |
5 | 部下の成長を促す | ペンドルトン型 |
それぞれのフレームワークについて具体的に説明します。
部下に納得感を与える「SBI型」
SBI型フレームワークとは「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の3つの言葉の頭文字をとった手法です。米国のThe Center for Creative Leadership社が開発しました。
どのような状況下で行動したかという原因と、どのような影響が出たかの結果を明確に伝えられるため、相手が納得しやすくなります。
■具体例
Situation(状況):ミーティングを実施したときに Behavior(行動):議論を活性化させるために、積極的に発言してくれていましたね。 Impact(影響):あなたの発言は他のメンバーに刺激を与えてくれて、ミーティングの生産性が上がりました。本当にありがとう。 |
部下の行動を改善させられる「FEED型」
FEED型フレームワークとは「Fact(事実)」「Example(指摘理由)」「Effect(影響)」「Different(今後の改善策)」の4つの言葉の頭文字をとった手法です。
相手の行動を改善させたい場合に効果を発揮し、主にネガティブなことを伝える場合に活用されます。
■具体例
Fact(事実):プレゼン資料を作成してくれてありがとうございました。 Example(指摘理由):作成してくれたプレゼン資料を役立てるために、商談の提案時に配布するようにしましょう。 Effect(影響):前回は商談時に資料を提示してしまったため、お客様の要望や課題を具体的に聞けませんでしたね。 Different(今後の改善策):今後はお客様の要望や課題を聞いた後の提案時に資料を提出しましょう。そのように心がければ、お客様の気持ちに寄り添える商談ができるはずです。 |
チームの振り返りに活用できる「KPT型」
KPT型フレームワークとは「Keep(継続すべきこと)」「Problem(抱えている課題)」「Try(今後は改善すべきこと)」の3つの言葉の頭文字をとった手法です。上司と部下が、お互いにコミュニケーションを取り合いながら行うため、チームでの振り返りにも有効です。
■具体例
Keep(継続すべきこと) 上司:A社との商談でどこが上手くいったと思いますか? 部下:A社が抱えている課題に関して深堀りができました。 Problem(抱えている課題) 上司:逆にA社との商談で改善すべき点はありましたか? 部下:クロージングがスムーズにできませんでした。 Try(今後は改善すべきこと) 上司:クロージングがスムーズにできなかった理由は、クロージングトークの例文を覚えていないからですね。次回の商談までに覚えておきましょう。 部下:わかりました。 |
ネガティブな情報を伝えられる「サンドイッチ型」
サンドイッチ型フレームワークとは、ポジティブな内容にネガティブな内容を挟む手法です。最初に部下を褒めた上で改善点を指摘して、最後に再び褒めます。最初と最後にポジティブな内容を伝えるため、ネガティブな内容を伝えてもモチベーションが維持しやすくなります。
■具体例
Positive(良い点):プレゼン資料の事例が分かりやすいと評判が良かったです。 Negative(悪い点):しかし、プレゼンの声が小さくて聞き取りにくく感じました。 Positive(良い点):プレゼン内容は素晴らしかったので、次回は自信を持って説明すれば受注につなげていけるでしょう。 |
部下の成長を促す「ペンドルトン型」
ペンドルトン型フレームワークは、部下自身に改善点を考えてもらう手法です。部下は上司に改善点を報告して、課題を解決するための方法を模索します。時間がかかる方法ですが、部下自身の成長を促せます。
■具体例
部下:資料の作成時間が遅いため、フォーマットを活用したいと思います。 上司:フォーマットがあれば業務効率化ができそうですね。 部下:はい。 上司:どのようなフォーマットを作成しようと思っているのですか? |
参考資料:d’s JOUARNAL「効果の高いフィードバックのやり方とは?人材育成や評価で役立つ手法やコツについて解説」
質の高いフィードバックをするための8つのコツ
フィードバックに活用できるフレームワークをご紹介しましたが、部下と信頼関係を構築するためにも、タイミングや話し方に気をつけましょう。次にフィードバックする場合のポイントについて解説します。
1.タイムリーに伝える
フィードバックはタイムリーに伝えてください。その理由は、業務を具体的に振り返ることができ、何をどのように改善すべきか気づくことができるためです。エビングハウスの忘却曲線では、人の脳は1度学習したことを1時間後には56%、1日後には74%忘れると述べられています。タイムリーなフィードバックを心掛けなければ、部下自身が業務を忘れてしまっており、アドバイスしても効果が見込みにくくなります。
2.行動に対してフィードバックする
フィードバックをする場合は、部下の行動に対して行ってください。部下の人格や能力を否定すると、心を折ってしまいかねません。最悪の場合は、上司と部下の信頼関係が壊れてしまい、仕事が行いづらくなります。成長して欲しいという気持ちを込めれば、「上司は自分を見てくれている」と安心感が与えられます。
3.実現可能な改善方法を提示する
部下の能力に合わせて、実現可能な改善方法を提示することも大切です。その理由は、部下の能力に見合わない改善方法を提案してしまうと、部下が不安を募らせてしまうためです。
その結果、上司と部下の信頼関係が破綻してしまいます。このような問題が起きないように、業務進捗を確認しつつ、部下の能力に合わせた実現可能な改善方法を提示するようにしましょう。
4.具体的な内容を伝える
フィードバックでは、部下の行動に対して、具体的な内容まで踏み込むようにしましょう。例えば「プレゼンは良かった」と伝えるのではなく「今日のプレゼンの競合他社の事例はイメージがしやすかった。」と、部下のどの行動を評価しているのか具体的に伝えてください。
誰でも褒められれば嬉しくなるものですが、具体的な内容でなければ、その場限りで終わってしまいます。場合によっては、褒められた事実しか残りません。そのため、具体的な内容を伝えるようにしましょう。
5.1対1の対面により実施する
他の人に聞こえてしまうオープンな空間でのフィードバックは避けて、1対1の対面で実施するようにしましょう。フィードバックは、基本的に部下に改善して欲しいところを伝えなければいけません。
人前で指摘されると、恥ずかしさや悔しさを感じてしまい、傷付いてしまう恐れがあります。このようなトラブルを防止するために、フィードバックは1対1の対面で落ち着いて行うようにしましょう。
6.他の社員と比較しない
フィードバックをする場合は、他の社員と比較して部下が足りない部分を指摘してはいけません。例えば「Aさんは、このような取り組みで、あなたの倍の成果を上げている」など伝えてはいけません。このような説明をしてしまうと、部下のモチベーションが下がります。そのため、日頃から部下をちゃんと見ていることも伝えましょう。
7.根拠を示す
フィードバックをする場合は、業務上の事実を根拠に判定していることを説明してください。根拠を示すことで、部下の納得感を醸成することができます。
根拠のないフィードバックをすると、部下は批判された気持ちになるかもしれません。そのため、根拠を示しながら改善方法を提案するように心がけましょう。
ブラックボックス化しやすい営業手法の可視化などデジタルツールでできる時代となりました。これらのツールを活用して、部下の業務のパフォーマンスを記録して、把握するようにしておきましょう。
8.部下との信頼関係を構築する
フィードバックは、上司と部下の信頼関係が構築できているかで効果が左右されます。
日頃から部下が抱えている問題を理解してあげて、乗り越えるためのサポートをしてあげていれば、フィードバックを受け入れてもらえるでしょう。
部下は理解者である上司の言葉であれば、素直に受け入れてくれるものです。そのため、日頃から部下をサポートして信頼関係を構築していきましょう。
参考資料:HR Café「フィードバックの意味・やり方を分かりやすく解説!効果を出すコツとは?」
まとめ
上司は部下を育成のために、フィードバックをする場合は質を意識しなければいけません。質が高いフィードバックが行えなければ部下は育ちません。そのため、質の高いフィードバックをするためのフレームワークとポイントをおさらいしておきましょう。
【フレームワーク】
- SBI型:部下に納得感を与える
- FEED型:部下の行動を改善させられる
- KPT型:チームの振り返りに活用できる
- サンドイッチ型:ネガティブな情報を伝えられる
- ペンドルトン型:部下の成長を促す
【ポイント】
- タイムリーに伝える
- 行動に対してフィードバックする
- 実現可能な改善方法を提示する
- 具体的な内容を伝える
- 1対1の対面により実施する
- 他の社員と比較しない
- 根拠を示す
- 部下との信頼関係を構築する
ぜひ、これを機会にフィードバックの方法を見直してみてください。