リモート環境での社内コミュニケーションとモチベーション管理について

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあり、社会的認知度が高まるリモートワークですが、一度導入してみたものの、運用に失敗して元の働き方に戻る企業が多いようです。

 

2020年7月14日に東京商工リサーチが公開した「第6回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」では、約4分の1の企業がリモートワークを実施したが、取りやめたと回答しています。

 

リモートワークに苦戦する企業がある一方で、積極的にリモートワークを採用して急成長している企業もあります。どうすれば、リモートワークを上手く活用することができるようになるのでしょうか?

 

この記事では、成功事例を踏まえたリモートワークのやり方や、チーム構築方法について紹介します。

 

リモートワークにおけるチームのコミュニケーション不足が引き起こす問題とは

大手通信事業者KDDIが実施した「ウィズコロナ時代テレワークの課題・工夫に関する調査結果」でも、「コミュニケーションが取りづらい」と回答する人が半数を占めるなど、リモートワークは対面で話す機会が減るため、コミュニケーション不足に悩んでいる企業が多いようです。

また、リモートワーク先駆者IBMをはじめとする在宅勤務先進国の米国では、コミュニケーション不足を感じてリモートワーク制度の廃止の動きをとる企業も出てきました。リモートワークが上手くいかず、コミュニケーション不足で従業員のモチベーションが低下した場合、どのような問題が起きるのでしょうか?ここでは、想定される問題を紹介します。

参考:Business Journal「在宅勤務“先進国”の米国、すでにリモワ廃止&オフィス勤務義務化へ回帰という現実」

 

離職者が出る

働く人の心理を研究する一般社団法人日本アンガーマネジメント協会が実施した「新卒が3年以内に離職した理由の調査結果」では、5割の新卒は上司とのコミュニケーション不足に悩み退職しています。また、4年以上在籍している新卒は同僚との良好な関係に満足していることが調査で判明しています。

また、ハーバードビジネスレビューの調査によると、リモートワーカーは疎外感を感じやすいとの結果が出ているので注意しなければいけません。さらに、カリフォルニア大学デービス校の経営大学院のキンバリー・エルスバックによるとリモートワークは通常の評価よりも低い評価をしがちだと述べています。

参考:HarvardBusinessReview「A Study of 1,100 Employees Found That Remote Workers Feel Shunned and Left Out」,MITSloanManagementReview「Why Showing Your Face at Work Matters」

 

労働生産性の損失が出る

米国のSMB Communicationの研究によると、社内コミュニケーションの弊害により、従業員1人当たり年間300万円も生産性が落ちると公表されています。そのため、従業員が数万人いる大企業は、コミュニケーション不足によって年間にして数百億円規模の損失が見込まれることになります。

(参考:ITmediaニュース「職場コミュニケーション不足は「数千万円の損」? 米IT企業が取り組む“意識改革”」) 

心身ともに健康を損ねる可能性がある

独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターの研究によると、人間のモチベーションは簡単に失われてしまうようです。気分が沈む、物事が楽しめないなどの落ち込みだけではなく、食欲低下・睡眠不足などの身体症状や、罪悪感や希死念慮を抱くなどの精神症状も悪化させてしまう可能性も出てくるため注意しなければいけません。

参考:THE21ONLINE「「うつ病」と「やる気」の関係~知っているようで知らない!」

 

個人がチーム全体のモチベーションを下げる可能性がある

モチベーションが低い従業員がいると、チーム全体のモチベーションにも悪影響を及ぼします。人材紹介サービス会社エン・ジャパンが実施した「職場での人間関係意識調査」では、同僚や後輩の不平不満が多いと人間関係について難しく感じると回答する人が41%と最も多い結果となっています。

この結果から分かるように、モチベーションが低い従業員が職場の雰囲気を悪くしてしまうので注意しなければいけません。チーム全体のモチベーションが低下すれば生産性が大幅に下がるため、管理者は各従業員のモチベーションを軽視してはいけません。

 

他の従業員の負担が大きくなる

モチベーションが低下した従業員の仕事の質は下がります。その仕事をカバーする従業員が必要になりますが、大きな負担を与えることになるので注意しなければいけません。

世界140ヵ国にITソリューションを提供するWrikeの「職場でのストレス調査結果」によると、職場でのストレス原因1位は「仕事量が多すぎる」という結果でした。そのため、カバーをしてくれた従業員の物理的・精神的に負担を考慮してケアも必要となってきます。

リモートワークでモチベーションアップさせる方法とは?

リモートワークに苦悩する企業が存在する一方で、営業人員を中心にリモートワークを積極的に採用して業務効率化に成功している企業も存在します。実際に中国最大手旅行会社Ctripはリモートワークで生産性13%の向上に成功し、さらには利益が向上しました。

 

リモートワークは場所を選ばずに働けるため、正しく運用することができれば、従業員のモチベーションを維持しつつ稼働率が上げられるのです。ここでは、リモートワークを積極的に導入して、成功を収めている企業の運用方法について紹介します。

参考:4 tips to boost your virtual team’s productivity, https://www.gsb.stanford.edu/faculty-research/working-papers/does-working-home-work-evidence-chinese-experiment

 

1.OKRを策定する

世界最大シェアを誇る半導体メーカーのIntelが成長し続けている秘訣はOKRです。OKRとは、「Objective and Key Result(目標と主な成果)」の略で、チーム全体の目標と個人の目標を立てていきます。

長期的な目標だけではなく、短期的な目標を設定して、目標到達を称え合うことで従業員のモチベーションアップを促進させるのです。インテルでは、OKRの策定と実行により、業績が大きく伸びました。(参考:John Doerr on OKRs and Goal Setting at Google and Intel)

2.レスポンスを早めにする

クリエイティブソフトウェア世界最大手のAdobeSystemsは、世界中に拠点を持つグローバル企業です。そのため、各拠点間での会議などは、リモートで行われています。

 

同社のデジタルメディア統括本部長専務執行役員の神谷知信氏は、リモートワークの仕事術でレスポンスを早めにすることを心掛けているようです。返事を待つことは、物理的にも精神的にも消費してしまうため、待ち時間を削減することが何よりも大切だと述べています。

(参考:Yahoo!JAPANニュース「仕事で大切なことは、早いレスポンスとオーバーコミュニケート。アドビ神谷知信さんの仕事術)

 

3.従業員を信用すること

人材紹介会社Warisは、東京・福岡・ベトナムに暮らす3名の代表が共同事業として起ち上げ、2013年の創業時から時間と場所に捉われない働き方を掲げてきました。約40名の全従業員がリモートワークを採用しています。

 

創業時からリモートワークを採用していた同社では、従業員を信用して無暗に監視しない姿勢を大切にしています。テレワークでは業務をサボる人が出ると懸念されていますが、逆に働き過ぎてしまう人もいるのです。

 

リモートワークのメリットは自由で生産性が高い働き方ができることと捉えており、成果重視を心掛けているのです。従業員を信用することで、逆に生産性が上がると考えられています。

(参考:西日本新聞社「テレワーク、成功の鍵は?「達人」たちにノウハウを聞いてみた」)

 

4.オンライングロースの考えを取り入れてみる

2018年5月にサイバーエージェントが設立した広告事業新会社CyberACEは、設立当初から欧米の事例などを学んでリモートワークの体制を整えてきました。

オンライングロース(Online Growth)の考えを社内に根付かせることで、リモートワークの環境下でも従業員1人1人の意欲の向上に成功しています。

 

オンライングロースとは、オンラインツールを駆使することで、業務の効率化を図り、クライアント成果の最大化を突き詰めるという意味です。対面からオンラインに移行してコミュニケーションが不足しても、各従業員が高い意識を持って仕事に励める考え方として”オンライングロース(Online Growth)”は注目を集めています。

(参考:サイバーエージェント公式オウンドメディア「「オンライン営業」に特化したサイバーエースの”リモート体制でない”本当の強み」)

 

4.コミュニケーションの場を設ける

セールスソフトウェア大手のHubspotでは、リモートワークで大切なことはコミュニケーションの場を設けて、交友関係を深めることと述べています。ハッピーアワーと呼ばれる時間を1時間設けており、この時間で相互理解を深めたり、コミュニケーションを取って友好関係を構築する場が積極的に設けられています。

(参考:Hubspot「How to Be Successful at Remote Sales, According to HubSpot’s Remote Salesforce」)

 

5.セルフコーチングの場を提供する

自己実現や目標達成を望み、仕事に対する意欲が高い従業員のモチベーションを高める方法として、セルフコーチングが高い効果を発揮します。セルフコーチングとは、自己実現や目標を達成するために質問や傾聴を通して自発的な行動を促すためのコミュニケーション技術のことをいいます。

 

まとめ

リモートワークに苦悩する企業が存在する一方で、積極的にリモートワークを採用してビジネス機会を創出している企業も存在します。新型コロナウイルスが収束するまでは、リモートワークが適切に行えるかがビジネスの成功の鍵を握ります。

また、予測不能な事態に備えてリモートワークが行える環境下を整えておいた方が良いでしょう。ここで、リモートワークのチーム構築方法をおさらいします。

 

1.働き方改革に関心を寄せる

リモートワークが世界で一番普及しているのが米国です。約8割の企業がリモートワークを採用している米国では、ホワイトカラーエグゼンプションが機能しているため、労働時間に制約がなく裁量で仕事ができる環境が整えられています。

 

2019年4月1日から日本でも働き方改革が施行されましたが、働き方改革法に強い関心を寄せている企業はリモートワークを積極的に採用しています。

 

今後は、少子高齢化社会となり労働人口が減少していくことを見据えて、多様な働き方を認めて優秀な人材を採用していくことが大切となると考えられているため、リモートワークに強い関心を寄せている企業が飛躍していく時代を迎えるでしょう。

 

2.コミュニケーションの頻度と早さを意識する

リモートワークでは顔を合わす機会が減るため、定期的にコミュニケーションを取ることが大切になります。

 

また、レスポンスに要する時間が分からないと大きな負担になるため、早いレスポンスを心掛けるなど、リモートワークに成功している企業には仕事術があります。そのため、成功事例を参考にしたマネジメントを行うことが大切です。

 

3.従業員が自主的に成長できる環境を用意する

リモートワークは、場所や時間を選ばずに働けるので仕事の稼働率を上げられます。仕事に対して意欲を持つ従業員は、自己実現を目指したいと考えていることが多いです。このような従業員の満足度を高めるために、セルフコーチングの場を提供する企業が増えています。

 

対面する機会が減るリモートワークですが、AIによるコーチングが受けられるサービスも続々と登場しています。これらを活用すれば、教育コストの削減にもつながるので導入を検討してみましょう。

 

今回は、リモートワークのチーム構築方法について解説しました。新型コロナウイルスの影響でビジネスは大きく変化しています。ぜひ、本稿をリモートワーク運用にお役立てください。