Withコロナにおける不動産業界の営業力強化策とは?(インサイドセールスとMAツール活用)

不動産業界でも、集客や営業に関してもDX(デジタルトランスフォーメーション)化が推奨されており、その中でも注目を集めているのが「インサイドセール」と「MAツール」です。

国内では、新型コロナウイルスの影響を受けて、不動産業務プロセスを見直す不動産会社が増えました。業務プロセスの中で、営業強化を目的としてインサイドセールスとMAツールの活用に取り組む不動産会社が増えてきています。本記事では、Withコロナにおける不動産会社の営業力強化について解説します。

不動産業界でも進むインサイドセールスとMAツール活用

新型コロナウイルスは不動産業界に大打撃を与えました。ラスココンサルファームが実施した調査の結果によると、不動産会社の81%が集客減したと回答しています。

不動産業界は、トップパフォーマーに頼る属人的な体制が主流でしたが、営業生産性を向上させるために、営業業務を分担化する企業が増えてきています。先進国の米国の不動産会社では、フィールドセールスとインサイドセールスによる営業業務の分担化が進んでおり、営業時間配分の約90%をインサイドセールスが担っているという調査データもあります。

(参考:insidesales.com「Selling to the inside Sales Imdustry」)

(参考:salesforce「インサイドセールスの活用で、営業部門が一気に効率化する!」)

(参考:BUILT「新型コロナの不動産業界への影響を調査、81%が集客減」)

 

インサイドセールスとは?

インサイドセールス(insidesales)は、電話やメールなどでコミュニケーションを図り、顧客との関係性を深めていく営業手法です。顧客の場所を訪問して、製品やサービスを提案するフィールドセールス(fieldsales)とは分離され、営業業務プロセスを分担し合う方法が基本的な形態です。

営業業務を分担化する場合のインサイドセールスの役割は、見込み顧客の管理と育成です。インターネットが普及した現在では、顧客自身が情報収集し、さまざまな不動産情報の中から複数の候補に絞り込むことも少なくありません。

自社サイトにお問い合わせをくれた顧客をリストアップしておけば、顧客の興味・関心度合いを測定できて、それに見合ったアプローチがかけられます。このような手法で、見込み顧客を商談化することがインサイドセールスの役割です。Withコロナの環境下に相応しい営業スタイルとしても注目されてきています。

※インサイドセールス導入の意思決定に役立つ情報として、ぜひ下記の記事もご覧ください。

【10分で理解する】成長企業は何故インサイドセールスを導入しているのか?

【3分でわかる】ゼロからインサイドセールス部門を立ち上げる方法とは?

「インサイドセールスの検討~導入~効果的な運用」

 アフターコロナ時代を生き抜く鍵を握るインサイドセールスとは?

MAツールとは?

MAツール(マーケティングオートメーションツール)とは、マーケティングにおける業務の効率化を図るシステムのことです。

一定の条件に基づきリードを点数化して、どのリードからアプローチすべきか決める機能が盛り込まれています。効率的な営業をする上では欠かせないツールで、マーケティングとセールスをつなぐ役割を果たします。

※さらに詳しい説明については用語集をご覧ください。

インサイドセールス、MAツールで得られる効果

Email concept with man using his tablet computer

Inside Sales Conference 2019 winterにも登壇したSales force社は、インサイドセールスで得られる効果は下記の通りと述べています。

業務効率化が図れる

不動産会社では集客業務も営業担当者が担っているケースが多いです。

しかし、見込み顧客に対してアプローチして案件化するまでをインサイドセールスで行い、商談移行のプロセスを営業担当者が行えば業務の効率化が図れます。

見込み顧客のリストアップ、提案書作成は経験が浅い担当者でも行える業務です。このような業務をインサイドセールスで行えば、有能な営業メンバーは契約獲得に集中することができ、チーム全体で成約率を上げることができます。

愛知県で不動産業を手掛けるアップウィッシュグループのアップレボ不動産販売社 においては、Webからの集客に力を入れており、月に300件ほど反響があるとのことです。この反響に対して、インサイドセールスが5分以内に対応。その際にアポイントを設定し、営業担当者に日程を共有。営業1人あたりで月間10組ほど新規アポイントを設定することができているとのことです。

(参考:https://employment.en-japan.com/desc_727375/)

コア業務に特化した人材育成が行える

フィールドセールスとインサイドセールスを分離することで、フィールドセールスは本来の業務に専念できます。不動産契約では大きな金額が動くため、フィールドセールスには高い知識が求められます。そのために、宅地建物取引主任者や不動産鑑定士などの資格取得に励む人もいますが、コア業務に特化した人材育成が行うことができます。

商談の機会損失を防止できる/見込顧客への適切なアピールができる

営業チームのリソースが足りずに十分なフォローが行えず、商談の機会損失が出ている不動産会社は多いです。しかし、フォロー専門部隊となるインサイドセールスを立ち上げることで、見込顧客に対する迅速なフォローが行え、商談の機会損失が防ぐことができます。さらに、MAツールを活用することで、最適なタイミングで営業活動を行うことができます。

野村不動産はMAツールのマルケトを活用することで、以下の成果をあげました。

・メルマガの開封率が1.5倍

・来場率が11%増

・契約率が約2倍

マンション販売においては、資料請求は獲得しやすい反面、実際に『来場』に持っていくまでのハードルが高いという課題点があったものの、MAツールを使うことで見込顧客への適切なアピールができたことが成果につながったとのことです。

また、SREホールディングス株式会社セールスフォース・ドットコムが提供するSalesforceと一体型のMAツールPardotを導入。以下の成果をあげることができたとのことです。

・新サービスの開発期間を 3 分の 1 に短縮

・反響数は 6 か月で 2.5 倍

(参考:salesforce「インサイドセールスの活用で、営業部門が一気に効率化する!」)

(参考:https://www.xdata.jp/blogs/marketing_automation/realestate.html)

(参考:https://www.sumave.com/20180201_2520/)

(参考:https://www.salesforce.com/jp/customer-success-stories/sre-group/)

 

不動産業界のインサイドセールスとMAツールを組み合わせた成功事例

インサイドセールスとMAツールを組み合わせることで成功した事例について確認しておきましょう。

Salesforce導入で成果を上げた株式会社atumel

前掲アップウィッシュグループのグループ会社である株式会社atumelは、グループ会社全体のマーケティングとインサイドセールスを担う事業と、全国の不動産会社に対してマーケティング支援サービスを提供する事業を担うコンサルティング会社です。

不動産会社に対して、Salesforceの導入をして業務効率化・商談化率向上を支援しています。同社のSalesforceを活用した業務効率化・商談化率向上は、全国中小企業クラウド実践の優良モデル事例に選出され、総務大臣賞を受賞しました。そのため、国内の不動産業界のインサイドセールスの成功事例として大きな注目を集めています。

SalesCloudとPardotで見込み客を育成

atumelのコンサルティング内容を説明します。

・情報の一元管理

最初に着手することは、顧客・商談状況の情報管理の一元化です。多くの不動産会社はExcelで情報管理されており、更新頻度はまちまちで正確性に欠けています。このような状況では、グループ全体の経営状況は不透明なままです。これらの情報をSalesCloudで一元管理すれば、リアルタイムで精緻に把握できるようになります。

・広告宣伝費の最適化

不動産会社はチラシや雑誌掲載に宣伝広告費を投下していることが多いですが、これでは、費用対効果が良く把握できません。そのため、宣伝広告費の最適化を図るためにWeb広告を提案。Web集客で見込み度が高い顧客を獲得するのは難しいですが、ここでの目標は新規リードを獲得することです。

・インサイドセールスで見込み顧客の育成

リードに対して、ナーチャリングを実施して、見込み客を育成していきます。見込み客に動きが出たらSalesCloudに情報を入力。次に、MAツールのPardotで見込み客の行動を追跡して興味・関心を把握しながら、その顧客が求めていそうなコンテンツ配信をして、アポ取得までこぎつけます。アポ取得ができたら、フィールドセールスに案件を回します。

インサイドセールスで商談件数4.4倍に上昇

Sales CloudとPardotを活用したインサイドセールスを実施した結果、2014年に1,560万円かけていた宣伝広告費は、2017年に51%の800万円まで削減。しかし、WEB経由の集客数は、同年比で348件から1,178件へと3.3倍に急増しました。さらに、商談件数は同年比で129件から573件と4.4倍に跳ね上がりました。

インターネットが普及して、顧客自身が必要な情報を入手できる時代となりましたが、情報が溢れる中で適正な情報を選ばなければいけません。その際に、インサイドセールスで有益なコンテンツ配信を送ったり、フォローアップすることで、案件化につなげられるのです。このような時代背景もあり、インサイドセールス市場は今後も拡大していくと予測されています。

(参考:Salesforce「導入事例 株式会社atumel」)

不動産業界でインサイドセールス、MAを実施する際のポイント

インサイドセールス、MAツールの導入を実施して案件化するためには、どうすれば良いのでしょうか?先進国のアメリカでは、インサイドセールス部隊を設けてチーム全体の成約数を伸ばしている企業が存在します。そのような成功事例を紹介しながら、インサイドセールスを実施する際のポイントについて解説します。

潜在顧客のニーズを理解する

インサイドセールスでは、潜在顧客のニーズの理解に努めることが大切です。適した情報提供のタイミングは、潜在顧客が自身の課題を認識していて、その課題を優先的に解決したいと考えているときです。

そのような心理状態での情報提供は歓迎されます。例えば、同じエリアにある物件情報を何度も閲覧している潜在顧客に対しては、他の物件情報を提供すると喜ばれるでしょう。そのため、オンライン上の行動を手掛かりに潜在顧客のニーズを理解しましょう。

ストーリーを構築する

製品やサービスに付加価値を与えて、見込み顧客の購買意欲を高めるためには、ストーリーを構築することが大切です。ストーリーは、見込み顧客が製品・サービスに興味を持ち、内容を検討して、購入決断に至るように気持ちを動かすためのプロセスです。

このストーリーを構築しておけば、電話やメルマガ、自社サイトでの商品紹介ページなど、あらゆる場面に使用できます。消費者が商品を選べる時代ですが、ストーリーを構築することで付加価値を高めることができるのです。

定期的なフォローを行う

潜在顧客に対しては、情報提供を通じて適宜コミュニケーションを図りながら、案件化するまで育てていかなければいけません。WEBサイトの閲覧履歴や資料請求などから得られる顧客リストから、案件化するものは僅かです。

しかし、競合他社・競合商品が溢れる現代は潜在顧客を育てていき、案件化することが売上アップに欠かすことができません。そのため、見込み度の低い顧客を放置するのではなく、定期的なフォローを行うようにしましょう。

ソーシャルセールスを有効活用する

National Association of Realtors(全米不動産業者協会)の調査によると、全米の不動産業者の77%がソーシャルメディアを使用して顧客の開拓を行っています。

ソーシャルセールスとは、ソーシャルメディアを使用して顧客と直接対話しながら行う営業手法です。インターネットの普及によって、興味を持った相手を検索するのは当たり前の時代となりました。ソーシャルメディアで、自身の過去の実績や職業について記載しておくことで、新たな依頼が得られるかもしれません。

日本では、ソーシャルセールスをしている方は少ないですが、先進国のアメリカはソーシャルセールスが主流になりつつあります。

インサイドセールスの営業手法を見直す

アウトバンド型インサイドセールスでは、定期的に営業手法を見直すことが大切です。見込み客を案件化できるインサイドセールスの営業方法には共通点があります。どのような営業手法であるかを見直して、案件化につなげられる手法をチーム全体で共有することで、チーム全体の成約数アップが見込めます。

近頃は、電話営業の内容を自動録音して成約が取れる営業電話方法を解析できるツールなどが登場してきました。これらを導入して、アウトバンド型インサイドセールスの質を高めれば、商談件数を増やすことができるはずです。

(参考:Close「16 inside sales pros share most effective sales tactics for closing leads」)

(参考:https://blog.homespotter.com/2020/01/22/marketing-success-stories/)

まとめ

今回は、不動産業界でも導入が始められているインサイドセールスについて解説しました。不動産業界はトップセールスマンの手腕が売上を大きく左右する属人化的なところがあります。そのため、営業組織の分離をして、優秀な営業マンが本業に集中できるような組織体制を整える必要があるのです。インサイドセールス、MAツールの運用にも知識が必要ではありますが、それらを活用することこそが、これからのWithコロナ時代に潜在顧客から商談を有効的に獲得できます。

実際に、国内で早い段階からインサイドセールスを設け、MAツールを活用している不動産会社では、商談件数が4.4倍に伸びたという成功事例もあります。競合他社や商品が溢れる現代では、潜在顧客を育てることが大切なのです。そのため、ぜひ、不動産業界の方は、これを機会に営業力強化に取り組んでください。

・おまけ
営業力のDX化といえば、インサイドセールスですが、その導入及び効果的な運用については、E-Bookに記載しましたので、ダウンロードしてお役立てください。