連続インタビューVol.5 ビズリーチ・茂野氏「業務を円滑にするために工夫しているポイント」

みなさん、こんにちは。
株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長 茂野 明彦氏へのロングインタビュー、第5回です。

前回は、「人材育成やモチベーション管理」、「定量目標」を中心にお話を伺いました。

今回は「業務を円滑にするために工夫しているポイント」、「反省を元に取り組んだこと」についてお話していただきました。


株式会社ビズリーチ
キャリアカンパニービジネスマーケティング本部 インサイドセールス部 部長
茂野 明彦氏 / Akihiko Shigeno
大手インテリアメーカーを経て、人材系ベンチャー企業に転職。5年間大手通信会社に出向後、自社に戻り研修事業を立ち上げる。2012年8月、株式会社セールスフォース・ドットコムに入社し、グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部門立ち上げに携わる。2016年12月、ビズリーチ入社。現在は、インサイドセールスグループとマーケティンググループを統括する。
※所属・役職等は取材時のものです。

 

インサイドセールスを機能させた後

――ここまでの話をまとめると、まず第1段階としてパイプライン評価を8段階に見直して、その8段階評価に準じてKGI/KPIを決める。
――第2段階として、KGI/KPI達成に必要な人材を確保する為の採用計画を策定する。
――第3段階として、人材育成計画とモチベーション管理のためのミッション/ビジョンを作る。という様な3ステップに大きく分けられるということですね。

茂野
はい、その通りですが、もうひとつだけあります。
組織の拡大と共に、達成すべき目標も必然的に上がっていきます。

そこで、成果の最大化を図るべく、インサイドセールスの商談機会提供数の次に、フィールドセールスの成約率を上げることにも着手しました。
インサイドセールスとフィールドセールスとの連携によってどのように成約率を向上することができるのか、具体的には次の5つです。

1. 成約しているパスを分析/分解して”良い商談”の条件を見つける
2. 1を元にパス条件を変更してクオリティをあげる

-ここまではインサイドセールス内部で対応可能です-

3. そのパスがどう管理されているか、フィールドセールス側のダッシュボードを確認する
4. フィールドセールスのミーティングに参加し、以下のような商談について、改善の提案や相談を行う

  • 進捗が芳しくない
  • 滞留している商談
  • 次のステップが曖昧
  • 決まっていない商談
  • 成約率の低いフィールドセールスの商談

5. 部門の全体最適を実現できる商談の割り当てやアサインの提案

 

上記によって、例えば成約率が倍になれば、インサイドセールスが提供すべき商談機会数は半分になり、より質を求めることに注力できます。その結果、更に成約率も上がり、セールス全体の成果を上げることができます。

ただし、インサイドセールスが機能し始めると、フィールドセールスからの期待値も上がり「もっと商談を提供してほしい」という話が増えてきますが、これに関しては注意が必要で、商談数が増えれば質が低下してしまうことまでフィールドセールス側に理解してもらい、正しい期待値を部門間で握ることが重要です。

インサイドセールスとフィールドセールスが連携し、量だけに注力せずに、質を引き上げていくためにPDCAをまわしていくことが重要になります。

 

RULES of ENGAGEMENTを徹底させる

――人員を一気に増やすとエントロピー増大しカオスな状態になりがちですが、急成長中にも業務を円滑にするために工夫するべきポイントはありますか?

茂野
最初に説明書を作ることだと思います。ビズリーチのインサイドセールスチームでは、「RULES of ENGAGEMENT」と呼ばれる基本原則や行動理念などを全部まとめたルールブックを創っています。インサイドセールスの仕事は複雑で多岐にわたるので、ルールやマニュアル作りはとても大切です。

これは前職時代にも作っていました。とても工数がかかるのですが、永続的に成長する組織には必要不可欠なものだと考えています。
今回はメンバーに挙手してもらい、作成してもらいましたがとても良いものができたと思っています。携わってくれたメンバー全員に感謝しています。

――ルールの項目について詳しく教えていただけますか?

茂野
配属後の作業内容に始まり、アプローチのルールやメール書面、用語集もあります。
業務内容の全てをこちらに載せています。また、リアルタイムに更新し、専用ポータルサイトと合わせてオペレーションエラーの低減に寄与しています。

※インサイドセールスチーム 蕭 燕霞さん製作 RULES OF ENGAGEMENTの表紙と目次

――凄い。。。とても細かく作られていますね。

茂野
はい。再現性に効くということもありますし、属人化を避ける上でも有効だと思います。また教育コストも下がります。

――数字が出せるようになってから工夫したポイントはありますか?

茂野
リードへのアプローチ方法を変えました。コンバージョンレートが一定以上のリードソースをホットリードと呼び、5分以内に電話するというルールを設けました。

これは既に証明されていて、5分以内と10分以内ではアポ獲得率が4倍違うというデータもあります。※下図参照
ですからリードスコアも重要ですが、熱いリードには迅速に対応する、また対応できる体制を整えることが重要です。

※ InsideSales.com – The Best Practices For Lead Response Management より抜粋

 

今後はホットリードになり得るリードソースを見つけていくことが重要視されます。リードの量を最大化することが当初の戦略でしたが、これからは生産性を高め、一層、質への転化が求められるフェーズになると思います。

また今後についてはMAをもっとIS自身が活用できるように進化する必要がありますし、我々もそこにチャレンジしています。これはまた別の機会にお話しします。

――インサイドセールスチームを成長させるにあたって、もっとこうしておけば良かったこと思うことはありますか?

茂野
前職との違いを私自身が明確に認識するべきだったと思います。

当初は前職の成功体験と同じ手法で良いと考えていましたが、事業部組織であることや商材が違うことの難しさを痛感しました。プロダクト毎のKGI/KPI達成にも影響を与えてしまったため、その認識不足は私の失着でした。

――失敗したポイントはありますか?

茂野
協力心を掻き立てるための仕組みが不足していたと思います。

ランキングの導入など、競争心向上の仕組みは出来ていたのですが、競争心に偏ったことでチーム内の連携の幅が狭まり、新入社員のモチベーションに影響を与えてしまったことがありました。

オープンでフラットな評価で競い合うことは重要ですが、目指すべきはナレッジがシェアされてお互いが助け合うことにより自立的に成長していく組織ですので。

 

巻き込み 巻き込まれよう

――そうした反省を踏まえて、今取り組んでいることはありますか?

茂野
今はMVPを取った人が、自分の成功体験のシェアを必ず行うことになっています。
「トップを取るということは、仲間に自分の成功事例を共有することである」という文化を根付かせたいという試みです。

またMVP以外にディレクターアワードというものを毎月設けています。これは成果以外のものを評価する指標で、「〇〇を助けてくれた」といった縁の下の力持ちとして貢献したことを評価するアワードとなっています。

――ディレクターアワードは人事評価制度に直結するのですか?

茂野
直接は関係しておりません。アワードはアワードなのです。

しかし、弊社では「巻き込み巻き込まれよう」という言葉もあり、会社のクレドを体現している人は会社の中でも評価されるべきだと思っています。

特に、インサイドセールスにとってレコグニション(実績の承認)をするということはとても重要です。インサイドセールスは直接お客様から感謝の言葉を頂くことや成約の瞬間を見届ける機会が少ないため、過程の一つ一つを評価することは求められると思いますし、それそのものがインサイドセールスとしての介在価値だと考えています。


※写真はMVPやアワードの盾。ビジネスマーケティング部 松橋さんがデザインしたもの

 

※受賞された時の盾を持つ蕭 燕霞さん(写真左)と、盾をデザインされた松橋 麻衣さん(写真右)です。撮影ご協力ありがとうございました。

次回予告

さて、お話はまだまだ続きますが、第5回はここまでとさせて頂きます。
次回は「インサイドセールス導入後に起きたハレーションと、その対処方法」について公開予定ですのでお楽しみに!

【過去記事】
第1回インタビュー記事「インサイドセールスが企業の成長に欠かせない理由とは?」
第2回インタビュー記事「ビズリーチがインサイドセールスに注力する理由」
第3回インタビュー記事「インサイドセールスチームの組織や採用」
第4回インタビュー記事「人材育成・モチベーション管理・定量目標」


株式会社ビズリーチについて

「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」をミッションとし、2009年4月より、人材領域を中心としたインターネットサービスを運営するHRテック・ベンチャー。東京本社のほか、大阪、名古屋、福岡、シンガポールに拠点を持ち、従業員数は1,238名(2018年6月現在)。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、AI技術を活用した戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」、求人検索エンジン「スタンバイ」、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」などを展開。
参照URL:https://www.bizreach.co.jp/