連続インタビューVol.4 ビズリーチ・茂野氏「人材育成・モチベーション管理・定量目標」

みなさん、こんにちは。
株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長 茂野 明彦氏へのロングインタビュー、第4回です。

第3回は、「見込み顧客を獲得するために行っていたこと」と「インサイドセールスチームの組織や採用」を中心にお話を伺いました。

今回は「人材育成 」「モチベーション管理と定量目標」についてお話していただきました。


株式会社ビズリーチ
キャリアカンパニービジネスマーケティング本部 インサイドセールス部 部長
茂野 明彦氏 / Akihiko Shigeno
大手インテリアメーカーを経て、人材系ベンチャー企業に転職。5年間大手通信会社に出向後、自社に戻り研修事業を立ち上げる。2012年8月、株式会社セールスフォース・ドットコムに入社し、グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部門立ち上げに携わる。2016年12月、ビズリーチ入社。現在は、インサイドセールスグループとマーケティンググループを統括する。
※所属・役職等は取材時のものです。


人材育成のトレーニングプログラム

ーー人材育成はどのように仕組化しましたか?

茂野
最初はすべて私が人材育成の管理をしていました。ありがたいことに、毎月継続的に新しい仲間に入社していただき、初月中に仕事に慣れていただけるように指導、トレーニングを行っていました。

引き続き現在も毎月仲間が増えており、組織の規模が大きくなってきたので、私が行っていた育成を10カ月のトレーニングプログラムにまとめて、専門トレーナーのもとで人材育成を行っています。

ーー10カ月のトレーニングプログラムの内容はどのようなものでしょうか?

茂野
1ヶ月ごとに内容が区切られており、期間ごとにステップを踏んでいく形となっています。(下図ご参照)

最初はシステムの操作やヒアリング力の向上など、成果を出すための基本的なところから教育します。次はインバウンドリードのハンドリング方法や失注商談の掘り起こしなどのアウトバウンドにつながる仕事のインプットを行います。

後半はオンラインセールスにステップアップする準備段階としてプレゼンテーションや自己の課題整理の方法を教えます。
オンラインセールスに進んだ後はパイプライン管理の方法、フェーズ管理の方法、お客様へのアプローチの仕方などキャリアに合わせたトレーニング方法を都度カスタマイズしています。

※図は簡易的なものです。
※10ヶ月はあくまでも目安であり、個人のスキルに応じて期間を調整します。

私たちは飛行機のエンジンである

ーー凄い。。。流石仲間を大切にするビズリーチだけあって、トレーニングもかなり充実していますね。。。
ーー一方で、いくらトレーニングをしたとしても、エンゲージメントを上げないとなかなか結果が伴わないと思います。エンゲージメントを上げるためのモチベーション向上施策はどのように行っていますか?

茂野
1つ目は目指すべきゴールを設けることです。

「僕らが目指すのは日本一のインサイドセールスである。現段階では、より優れている他社があるかもしれない。しかし、私たちは彼らを一定期間内で追い越す。」と毎日説き続けました。このように視座を高く保ち、挑戦的な目標を忘れないことがモチベーション管理において必要不可欠です。

2つ目は、私たちが行っているインサイドセールスの貴重性、必要性を自覚し続けることです。

具体的には外部講師を招き、インサイドセールスの価値についてお話をいただいたりしました。世界のマーケットにおけるインサイドセールスがどれほどの広がりを見せているのか、何が起こっているか、どれほど必要とされているのかなど詳しい説明をいただきました。

朝会においては他部署の方から「インサイドセールスは私達にとって生命線です。」とお話をいただいたり、役員の方からは「インサイドセールスは心臓です。インサイドセールスが全身に血液を送ります。これから多くの商談はインサイドセールスが提供します」と宣言されたことが私たちにとって大きな原動力となりました。

自分自身だけでなく、他者からもインサイドセールスの価値を認めてもらうことがモチベーション管理において重要です。

ーー茂野さんがビズリーチの一員となった後、インサイドセールスチームとしてMission/Visionは掲げていましたか?

茂野
はい、ビジネスマーケティング本部として掲げていました。
一言でいうと「私たちが会社の成長のエンジンである」ということです。

私たちが成長のエンジンであるから、私たちが止まったら会社も止まるということを強く意識しています。当初のイメージとしては車のエンジンでしたが、2017年8月から新卒がたくさん入ってきたため、大きくなって飛行機のエンジンとなりました。(笑)

「今、私たちが止まったら墜落する。だから、飛翔し続けよう。」という意識を持つようになりました。

定量目標で判断する

ーー立ち上げ時のKGI,KPIはどのようなものでしたか?

茂野
KPIは商談数、KGIは売上です。
最初ですので、とてもシンプルに設定しました。

ーーKGI,KPIは他部署と一緒に目標設定されたのですか?

茂野
はい、他部署と一緒に設定して、取り組んでいます。

例えばマーケティングチームと、このKGIをクリアするには大体これくらいKPIが必要で、このKPIをクリアするには大体これくらいのリードが必要だということを算出し、一体となって取り組んでいます。各事業部とも連携し、日々研鑽しています。

しかし、時期が経つにつれて少しずつ変わっていきました。
いまは4つの指標で目標設定しています。

  1. 商談数
  2. 商談化数(商談のうち、有効な商談に至った数)
  3. 受注数
  4. ポイント数(ビズリーチ独自のポイント制度)

ーーポイント数とはなんですか?

茂野
ビズリーチはいくつもサービスラインナップがあるのですが、受注の難易度などに応じてポイントを設定しています。

ビズリーチに入社して、インサイドセールスの目標設定やルールを作る上で難しかったことは、複数のサービスを展開しており、また各事業部ごとの組織体制が複雑であったことです。

フィールドセールスに対して、どのサービスで商談を進めていくかを設定するだけで、インサイドセールスの仕事は終わりません。
フィールドセールスに引き渡すリードの数のコントロール、サービス別の商談内容の取り決め、サービス別の受注難易度も違います。

そこで、サービス別にポイントをつけて差別化しようと考えました。

ーー社内調整や関係者の説得で気をつけたことはありますか?

茂野
アポという言葉をビズリーチからなくしました。
弊社では必ず商談機会と言うことにしています。

そもそも、インサイドセールスはテレアポと似て非なるものであり、マーケティング要素を多分に含んだプロフェッショナル集団です。「アポ」という言葉を使うと、どうしても「テレアポ」を想起してしまいます。

インサイドセールスは、お客様のインサイトを発掘した上で、商談させていただく機会を創出する組織であることを強く意識して貰うために「商談機会」という言葉を使っています。

前回お話した、8段階のパイプライン評価の1,2の部分をインサイドセールスが担い、商談機会を創出するというイメージですね(下記:詳細は第2回インタビューご参照)。

ーーパイプライン評価の8段階の1、2の見極めについて、もう少し具体的に教えていただけますか?

茂野
各事業で違いますが、例えばAとBとCという条件を満たしているといったような、商談として見込みがあるかどうかです。

ちなみに最初の頃は、90日以内に受注が見込める商談は進めていこうとなっていましたが、今は商談数も増えて、フェーズ管理も定着してきたため、属人性の排除を目指し、定量的に分かる指標で判断しています。

ーーつまり、定量目標の定性的判断から、定量目標の定量的判断に変更したということですか?

茂野
はい。
およそ90日を目標に受注を進められるようにしてはいましたが、あくまでも90日は感覚的なものであり、90日以内で受注が難しそうな場合は優先度を下げるというようなスタンスを取っていました。

しかし、このような定性的な判断であると後で成果を振り返って改善することが出来ません。一方、定量的判断の場合、数字に着目をすることで、目標に達しなかった部分だけに集中して改善活動を行えます。

そのため、最近では定量目標を定性的に判断するのではなく、定量目標の定量的判断への移行を進めました。これは社内にパイプラインフェーズ管理が根付いてきた今だからこそ可能となったことです。

ーー徹底的な定量化への移行期間はどれくらいかかりましたか?

茂野
1ヶ月くらいでしょうか。

ーー定量に重点を置きすぎるとモチベーションに影響が出るという話もありますが、そこはどのようにお考えですか?

茂野
たしかにモチベーションへの影響も考慮しなければいけません。突然、定量的に結果を求めすぎると多くの人は窮屈と感じてしまいます。そのため、最初は定量を押し付けるのではなく、ヒアリングのプロであるインサイドセールスには、ある程度柔軟性を持ってもらうことが重要です。

また、モチベーションを保ったまま定量判断を浸透させるためには、まず行動量を担保することが大切です。成功や失敗を通して、多くのことを学ぶことができるため、個人の成長欲を促すことが出来ます。

そうして、PDCAを回していけば、成果が出るようになっていきます。

成果を出すと、他部署や関係者から「ありがとう」の言葉が返ってきます。そこで自身の介在価値を実感することができるのです。

重要なのはメンバーを信じ、難しい課題や大きな目標を設定し、そこに向けて一緒にチャレンジしていくことです。モチベーションはコントロールするものではなく、一緒に作っていく環境のようなものだと考えています。

次回予告

さて、お話はまだまだ続きますが、第4回はここまでとさせて頂きます。
次回は「業務を円滑するために工夫しているポイント」、「反省を元に取り組んだこと」について公開予定ですのでお楽しみに!

 

【過去記事】
第1回インタビュー記事「インサイドセールスが企業の成長に欠かせない理由とは?」
第2回インタビュー記事「ビズリーチがインサイドセールスに注力する理由」
第3回インタビュー記事「インサイドセールスチームの組織や採用」


株式会社ビズリーチについて

「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」をミッションとし、2009年4月より、人材領域を中心としたインターネットサービスを運営するHRテック・ベンチャー。東京本社のほか、大阪、名古屋、福岡、シンガポールに拠点を持ち、従業員数は1,238名(2018年6月現在)。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、AI技術を活用した戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」、求人検索エンジン「スタンバイ」、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」などを展開。
参照URL:https://www.bizreach.co.jp/