連続インタビューVol.10 ビズリーチ・茂野氏「理想のインサイドセールスとは?」

みなさん、こんにちは。

株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長 茂野 明彦氏へのロングインタビュー、第10回です。

前回は、「インサイドセールスの採用について」、「スランプに陥ったときにはどうすれば良いのか?」を中心にお話を伺いました。

今回は「現時点での残課題と今後の展望は?」、「理想のインサイドセールスとは?」についてお話していただきました。


株式会社ビズリーチ
キャリアカンパニービジネスマーケティング本部 インサイドセールス部 部長
茂野 明彦氏 / Akihiko Shigeno
大手インテリアメーカーを経て、人材系ベンチャー企業に転職。5年間大手通信会社に出向後、自社に戻り研修事業を立ち上げる。2012年8月、株式会社セールスフォース・ドットコムに入社し、グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部門立ち上げに携わる。2016年12月、ビズリーチ入社。現在は、インサイドセールスグループとマーケティンググループを統括する。
※所属・役職等はインタビュー取材時のものです。

もっと早く、もっと強く

――現時点での残課題と今後の展望についてお伺いできますか?

茂野
今以上にデータドリブンに出来ると思っています。これは課題ですね。

また、常にメンバーの採用を続けておりますので、いかに早く一人前に育て上げるか(オンボーディング)が今後の鍵だと思っています。トレーニングにはある程度限界がありますので、オンボーディングを早くするための良いデジタルツールがあればと思ってます。

オンボーディングがなぜ大事であるかと言うと、ビズリーチのインサイドセールスはプロモーションさせる組織です。ですから、メンバーが一人前に全ての仕事を卒なくこなせる期間をできるだけ長く確保することが重要です。

さらに、インサイドセールスチームの在籍月数12ヶ月間だったものが、オンボーディングが早くなれば10ヶ月で済むということにも繋がります。プロモーションをプッシュし、フィールドセールスにメンバーを送り出すサイクルを早めることで、より強い組織になっていくと考えています。

その仕組みや組織作りが完成し、パイプラインも提供できる状態になれば、今度は人の入れ替わりが激しくても耐えることが出来るかどうか、さらに生産性を高めることができるかどうか、というように試され方が変わっていきます。来期はそうしたことにチャレンジしていきたいと思っています。

だからこそオンボーディングを早くしなければなりませんし、もっとスキルを均一化しなければいけないということが、私達には求められています。

――具体的にどんなデジタルツールがほしいのですか?

茂野
それはもう御社の製品です(笑)
MiiTel(ミーテル:音声解析AI搭載型のクラウドIP電話)ですね。(詳細はこちら

――恐縮です(笑)
――ありがとうございます。

茂野
インサイドセールスにおいては、オペレーショナルな仕事とそうではない仕事をどれぐらい切分けて、両方を研ぎ澄ませていけるかということが大事だと思っています。もちろん全てをデジタル化すれば良いという話ではありません。

商談メモを作るのには時間がかかりますが、これは自動で書き起こされれば済む問題ですし、お客さんによって話し方でコミュニケーションロスが起こるのであれば、そのロスはなくせる方が良いですよね。だとすれば、そういったロスをなくして本当にお客様の課題に踏み込む、課題を聞くということを増やせるようにした方が双方メリットがある訳です。

ということを考えると、コール前とコール中とコール後のようにに分けるとすれば、それぞれツールは必要ということになります。

多くの会社で共通すると思いますが、CRM(顧客管理システム)は様々なムダを排除できるので必要です。コール前には顧客のデータベース整備はしっかりとやらなくてはいけません。

コール直前や準備の段階では、業界の情報を知ることのできるプラットフォームがあると良いでしょう。不特定多数の様々な業界のお客様を相手にする中で、業界一つ一つを勉強する時間がないのであれば、プラットフォームで答え(業界の構造など)を導き出す他ありません。

コール中やコール後ではMiiTelのように、簡単に電話することや自動でSFA/CRMに記録をしてくれるツールがあれば飛躍的に生産性は上がるでしょう。

前提として、様々なスキルを身につけるためにトレーナーが必要ではありますが、これらのツールと運用するための体制があることはすごく重要だと思います。

インサイドセールスの未来

――今後、インサイドセールスはどうなっていくのでしょうか?

茂野
インサイドセールスがマーケティングとセールスの領域に発展していくと思います。
よりインサイドセールスがマーケティングを行うようになり、よりインサイドセールスがフィールドセールスの仕事を行うようになるでしょう。

例えば、スーパーインサイドセールスマンがいた場合、マーケティング担当者もフィールドセールス担当者も必要なくなるかもしれないと感じています。

自分で広告を運用して、入ってきたリードに電話して、自分でナーチャリングして、商談機会を取りつけて、クロージングしてしまえば良いですからね。究極的にはそこまで行くのではないでしょうか。イメージとしては、今までのセールスとマーケティングが行っていた間の部分がどんどんと横軸に広がる感覚です。

――そのようなトレンドはあるのでしょうか?

茂野
はい、そう思います。

しかし、トレンドは振り子だと思っており、集中と分散を繰り返すものだと思っています。今まですごく集中していたものが、今はプロセスを分けましょうといった分散期になっていますし、その後はまた集中に寄っていくのだと思います。

例えば、色々なツールが出てきて、それぞれを集中できるようになってくれば、それこそセールス&マーケティングが1人でいいかもしれません。スーパーインサイドセールスマンが出始めたり、横軸に横断する設計をしたりする会社が遠くない未来に出てくると思います。

そして、もう少し次の世界に行くと、効率化するために「分ける」から「自動化」になっていくと思います。お客様が電話で話したいという場合には、人工知能が電話をすることで解決というケースも出てくると思います。

――「人工知能により脅かされる職種」のなかには、「電話を利用する職種」も見受けられますが、そのことに関してはどう思われますか?
――インサイドセールスの仕事はなくなるのでしょうか?

茂野
無くなるものと無くならないものがあると思います。

無くなるものは、能動的な顧客の顕在的なニーズを成約に結び付ける仕事に関してです。そういう状態の顧客に対して、チャットボットや自動音声等を利用して成約に結びつけていくというのは自動化できるイメージがあります。

しかし、そのニーズをいかに顕在化させるか、そのためのアプローチにおいては、プロセスオペレーションやMAをどんなに適切に設定し、自動化しても、その仕事を無くすことは難しいと思います。

人間は必ずしも理性的なものだけで判断をする訳ではないですし、情緒的なものは絶対に残ると思っています。より人間が必要とされる所にインサイドセールスが行くことにはなるのであって、すべてがなくなるということはないと思います。

店頭のポップにカッコいい謳い文句や宣伝があるよりも、信頼する人やその領域のプロ、コミュニケーションスキルの高い人に「これがおすすめだよ!」と言われた方が人の心は動き、購買行動につながるのではないでしょうか。

インサイドセールスはミッドフィルダー

――茂野さんにとって理想のインサイドセールスとはなんですか?

茂野
フィールドセールスの方から、「もっともっとパイプラインを下さい」と懇願されるくらいの仕事になることです。

インサイドセールスという仕事に、インサイドセールス自身がちゃんとプライドを持っているということだと思います。

インサイドセールス自身が会社の重要な部分を担っているということを自他ともに認め、そういう気持ちで向き合っているかどうかだと思います。

別の切り口で言えば、社内で一番デジタルツールを使っていて欲しいです。
SFACRM、MAはもちろん、MiiTelもそうですが、やはりマーケティングはちゃんとした投資をすればその分ちゃんと返ってきますので。

特にインサイドセールスはオフィスの中にいる時間が長いため、一番デジタル武装をしやすい職種です。ITリテラシーが一番高くて、デジタルマーケティングリテラシーの一番高い人達がインサイドセールスであってほしいです。

マーケティングと営業が分かるので、サッカーで例えるならミッドフィルダーですね。攻めも守りも行い、かつ司令塔としての役割も大きい。

――その点を踏まえると今のビズリーチさんのインサイドセールスチームは理想形に近いと思うのですが、いかがでしょうか?

茂野
いえ、まだまだです。

ビズリーチでは、セールス経験のないメンバーもいますので、セールスに比べたらセールス力が低いかもしれません。また、全員がマーケティングをやったことがある訳ではないので、マーケティング力やコンテンツを作る力も劣るかもしれません。

これらは当然仕方のないことなのです。

私個人の意見ですが、セールス、マーケティング両方共に優れた力を持っている人がインサイドセールスに来たら一番面白いと思っています。

インサイドセールスからフィールドセールスに送り出したメンバーがセールスの力をつけてインサイドセールスに戻って来たり、マーケティングを経験した人がマーケティングの仕事をしながらインサイドセールスの仕事をしたりいった形になるのが理想です。

今はその逆で、インサイドセールスからプロモーションしていくだけの構図ですので。インサイドセールスの仕事をするにはセールス極めるか、「マーケティングを極めるかどちらかが必要です」という風になりたいですね。

ビズリーチに聞け!!

――いまのインサイドセールスチームは100点中、何点ですか?

茂野
現時点においては99点だと思っています。
残りの1点には今以上に多様なことに挑戦できるのではないかといった希望が含まれています。

ただ、歩みを止めてしまえばその点数はすぐに下がってしまいます。「現時点において」と強調したのはそのためです。1ヶ月間何もしなければスコアは10点近く下がるでしょう。だからこそ常に歩みを進め、99点に居続けることが重要なのです。

もちろん、メンバーは尽力していますし、昨年ビズリーチが急成長を遂げたのはインサイドセールスの影響が多分にあると感じています。ツールを駆使する力やチームビルディングを自分達で行う力も身に着け、フィールドセールスに多くの人材を輩出するまでの規模に成長しています。

その意味では、今インサイドセールスで出来ることは全て手を打っているとも感じています。しかし、それは満足しているということではありません。残りの1点はまだまだ長い道のりです。今の向上心を大切にして、これからもスピード感を持って取り組んで欲しいと思っています。

――茂野さんが今後ビズリーチで成し遂げたいことを伺えますか?

茂野
インサイドセールスの枠組みを超えて、あらゆる会社のベンチマーク(目標)にされていきたいです。競争優位性を持つということではなく、「ビズリーチのようにしてみたい」と参考にされることが好ましいです。

今はSalesforce.comさんがプロダクトやインサイドセールス、カスタマーインティマシー(顧客と親密な関係を築き、関係を強固にすることで顧客を囲い込むという考え方)など多方面でベンチマーク(目標)されていると思います。

また、「エンプロイー・サクセス」や「カスタマー・サクセス」を真似している企業も多いのではないでしょうか。私達も様々な領域で参考にされる会社になっていきたいと考えています。

「事業の立ち上げならまずはビズリーチに聞け!!」となれば嬉しい限りです。

次回予告

さて、お話はまだまだ続きますが、第10回はここまでとさせて頂きます。
次回はユーザー様から寄せられた「ユーザー様から寄せられた質問」について公開予定ですのでお楽しみに!

【過去記事】
第1回インタビュー記事「インサイドセールスが企業の成長に欠かせない理由とは?」
第2回インタビュー記事「ビズリーチがインサイドセールスに注力する理由」
第3回インタビュー記事「インサイドセールスチームの組織や採用」
第4回インタビュー記事「人材育成・モチベーション管理・定量目標」
第5回インタビュー記事「業務を円滑にするために工夫しているポイント」
第6回インタビュー記事「インサイドセールス導入後に注意すべき、組織間のコミュニケーションや体制構築」
第7回インタビュー記事「インサイドセールス導入時にやってはいけないこと、やるべきこと」
第8回インタビュー記事「インサイドセールスに向いている人は?」
第9回インタビュー記事「インサイドセールスに向いている人は?」

 

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株式会社ビズリーチについて

「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」をミッションとし、2009年4月より、人材領域を中心としたインターネットサービスを運営するHRテック・ベンチャー。東京本社のほか、大阪、名古屋、福岡、シンガポールに拠点を持ち、従業員数は1,304名(2018年10月現在)。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、AI技術を活用した戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」、求人検索エンジン「スタンバイ」、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」などを展開。
参照URL:https://www.bizreach.co.jp/