■ Inside Sales Conference 2018セッションレポート   〜インサイドセールス支援の競合3社が本音で話す、成功と失敗の3大要素〜【第2回】

――来場者からの質問:インサイドセールスを導入するためにはどうしたらいいのか。そして、導入した後に効果的に運用するためにはどうしたらいいのか、教えてください。

會田
続きまして、第2問『インサイドセールスを導入するためにはどうしたらいいのか。そして、導入した後に効果的に運用するためにはどうしたらいいのか、教えてください』

『インサイドセールスのモデルは4つの観点で考える』

秋谷氏
私も、色々な方々のインサイドセールスの導入に携わってきたのですが、まずどういうモデルにするのかをお話しさせていただいております。4つの観点で基本的にはインサイドセールスのモデルは変わってきます。
①営業の目的(新規の売り上げを作る、既存のお客様のカバー、クロスセル、アップセル等)
②自分たちの売りたいもの(商材)
③売り先(ターゲットの数)
④自社の営業体制

極端な例で、日本にお客様が10社しかいないところはわざわざ、インサイドセールスはやらないです。やはり、ある程度マーケットが大きいところなどが対象です。先ほど内山さんもおっしゃったように、マーケットの規模から、つまり営業の全体を考えます。インサイドセールスのフロントの部分だけ入れても意味はなく、まずは全体のプロセス設計を先にすべきだと思います。

『インサイドセールスは良い質のアポイントを供給していく。質とは何かを考えることが重要』

内山氏
基本的にインサイドセールスを何のためにやるのかを考えます。多くの場合、営業が受注出来る案件を見つけるためにインサイドセールスを行います。言い換えると、良い質のアポイントを作るためにインサイドセールスを活用します。ということは、その質とは何かというのをまず考えてもらいたいです。
単に担当者のお名前だけだったら、これは質がいいとは言えません。お名前だけでは戦略の立案ができないからです。ここにお客様の予算、コンペの商品、いつ導入するか、そんなデータが入っていたら、フィールドセールスは決めやすいですよね。つまり、インサイドセールスというのは、この情報の量を深めていくことが重要になります。さかのぼって、これをやるうえで、まず自社の商材はどんな商材なのだろう、どのような情報があれば売れるのだろうかということを考えないといけません。
我々がお客様から依頼を受けてインサイドセールスの支援を行う際は、このマトリックスを考えて動きます。

営業で予算化されていそうな商材で、1年以内に決まりそうな商材でしたら、インサイドセールスの中でも情報収集型ではなくて、左上のアポ獲得重視になります。受注できるのですから、ガンガンいった方がいいですよね。
ただ、右下のように、1年以内に決まる可能性が低く、予算化されていない商材、導入まで時間が掛かりそうな商材。例えば大きなERP(Enterprise Resources Planning)などは、お客様の情報を集め、お客様と定期的な関係を築かないといけません。この場合、アポ獲得ではなく、情報収集型のインサイドセールスとなります。このように、このマトリックスの中で、自分たちの商材の立場はどこかということに応じて、インサイドセールスは変形させることが大切です。

『商材に応じたシナリオとKPIを設定することが重要』

阿部氏
内山さんが今おっしゃったように、自社の商材の特性に応じてどうアプローチしていくことと、あとはKPIが重要と考えます。
前者は、内山さんが仰っていたことに加え、例えばセキュリティ系の商材だと、啓蒙が必要なので、営業プロセスにセミナーを挟む、といったようにマーケティングからクロージングまで、どのようなシナリオで進めていくのかを考えることが大事だと思います。
KPIはマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスのKPIをしっかり定めます。一旦仮置きでもいいので商談化率、受注率を置いて、とにかく始めてみるというのがいいと思います。

――来場者からの質問:インサイドセールスが最強であれば、訪問する意味がないと思います。訪問せずに受注を最大化できないだろうか、インサイドセールスで「完結できない商品」と「できる商品」があれば、違いがあれば教えてください

會田
秋谷さんのお答えと重なって、上がっているのですが、『インサイドセールスが最強であれば、訪問する意味がないと思います。訪問せずに受注を最大化できないだろうか、インサイドセールスで「完結できない商品」と「できる商品」があれば、違いがあれば教えてください』という質問です。
こちらの質問については、私がいつも講演しているインサイドセールスセミナー等でお話していますので、私からご説明させていただき、皆様から補足していただきたいなと思います。まさに我々、株式会社RevCommがインサイドセールス100%です。
10月にプロダクトをローンチ致しまして、現在60社くらいお客様にご導入いただいておりますが、全てインサイドセールスで受注しています。当初は、私一人でしたが、現在は営業3名になり、1カ月超で50社受注しました。インサイドセールスには、実はタイプが3つあると思います。分業モデル、協業モデル、独立モデルです。
① 分業モデル
これはフィードセールスがいて、インサイドセールスがその人達に先程のCIAのように、情報を渡し、グリーンベレーがどんどん商談を獲得してくるモデルです。

②協業モデル
インサイドセールスは主に内勤なのですが、必要に応じて自らがフィールドセールスと一緒に外出し、対面での打ち合わせをするモデルです。

② 独立モデル
これが我々のスタイルでインサイドセールス自らが、フィールドセールスの関与無しにノルマを持ち、電話でクロージングまで行ないます。

それぞれのメリット、デメリットはここでは割愛させていただきますが、どのモデルが自社に適切なのかというのを選ぶ上では『どんな商品/サービスを、誰に売っていくのか』が重要です。

先程、皆様からも説明があったのですが、『自社サービスの特性(種類・価格帯・提供方法)』と『対象顧客の属性(規模・法人、個人など)』を分析します。

例えば、低単価でかつ中小企業だと、売るハードルはさほど高くなく、中小企業側もミーティングの時間を節約するためリモートでの商談に応じるケースもあります。
ですから、ここは独立モデルです。一方で、低単価であっても、大企業はまだまだ対面営業の文化が根付いているので、独立ではクロージングできにくいと考えます。私も先日大手金融機関さんから一旦まず説明に来てくださいと言われたので、渋々訪問しました。
こういう現状があるので、16グリッドで自社のプロダクトと誰に対して何を売るのかということをマッピングしてアクションを決めるようにすると、自社のインサイドセールスのスタイルが分かりやすいと思います。

阿部氏
同様に、海外のSaaS企業がACV(年間の平均発注額)や顧客単価別に、営業手法を選んでいるというデータがあります。年間の売上が500万円くらいの約50件は、インサイドセールス、インターネットセールスを中心にしている様子がわかります。

――来場者からの質問:インサイドセールスの仕組みを作る際、抵抗勢力の突破方法について

来場者
S社のインサイドセールス部 部長のIと申します。私の部署はまだ一人インサイドセールス部、一人インサイドセールスマネジャーで、仕組みを最初から作っていかなければならないです。その際に各部署の抵抗勢力など、どのように突破していったら良いか教えていただけますでしょうか?

會田
これはよく聞くお悩みですね。インサイドセールスは今注目を浴びているので、一人インサイドセールス部の方がいらっしゃるのは確かで、かつ兼任ですよね。これは是非、お三方にお答えをいただきたいなと思います。

『特定のリストで成功体験を積んでもらう』

阿部氏
残念ですが、本当によくあるお話で、フィールドセールスの縄張り意識が強いことが原因の事もあります。そんな場合にお勧めさせていただくのは、どこか特定の1リストで成功体験を積んでもらう方法です。特によくお勧めさせていただくのは、展示会で獲得したリストです。展示会で獲得したあと、見込みが低いと結構、休眠リストになっているリストがあったりしますので、そこにまず、インサイドセールスがアプローチして、きちんと商談を作ってあげて、フィールドセールスに渡します。
フィールドセールスがインサイドセールスから来た商談で受注できると、「楽して受注できたな」という成功体験を積んでもらうことができるので、縄張り意識が薄まります。いきなり大きくやるというよりは、どこかの特定のリストからはじめるのが結構お勧めです。

『データを貯める』

内山氏
一概にこれが解決策とは言えませんが、営業マンは何名程いらっしゃるんですか?

Iさん
パートナーセールス入れて、20人弱くらいです。

内山氏
それをお一人でフォローされてるのですか?心中お察しいたします。

一同
(笑い)

内山氏
本当にこれはなかなか解決できないですよね。先程、阿部さんが仰った様に特定のリストで実績を作っていくのは有効です。またインサイドセールス側でできることもありまして、それはデータをお貯めになることです。フィールドセールスの方が受注するために必要な情報は何なのかを聞き出し、データベースに項目を追加して獲得した情報を蓄積なさってください。そこに対してどれくらい情報を取得できたかというのをエビデンスとしてお持ちになられたうえで、アポイントの獲得をなさってください。
この方法の何がいいかというと、営業を科学的に進められる点です。データが貯まり、条件に合致しているのに、受注率や受注数が上がらない。これは経営層からみても非常に問題です。インサイドセールスが取得したデータの蓄積により再現性を高める。まさにCIAと同じで、データを貯められて、自社の受注率がどれくらいになったのかというのを客観的に提示できると、評価がどんどん上がっていくのではないかと思います。

秋谷氏
阿部さんが話された中で、スモールな成功体験を作ってあげることが、非常に大きいと思います。一人、仲のいい営業に「少しこれだけ訪問してくれ」、とにかく1回これを試してください。「アンケートをやってくれないか」ということで、まず一人そこで信頼関係を作ること。
それから内山さんが話したようにしっかり情報を貯められる。インサイドセールスの大きな特長は、やはり情報をしっかりと蓄積することができることです。ここを経営層の方はすごく重視されます。将来の為になるということが分かっていますので、その情報の蓄積や経年変化などを可視化できると、非常に良いのかなと思います。

――来場者からの質問:スクリプトはどのようなプロセスで作っていますか?できる営業がスクリプトを考えるとかでしょうか?また、インサイドセールスが実際にそのスクリプトで話す前に、テストとかはするんでしょうか?それとも、スクリプトの精度で良し悪しのジャッジを含めて、インサイドセールス部隊がやるのでしょうか?

會田
質問が上がっていまして、『スクリプトはどのようなプロセスで作っていますか?できる営業がスクリプトを考えるのでしょうか?また、インサイドセールスが実際にそのスクリプトで話す前に、テスト等はするんでしょうか?それとも、スクリプトの精度で良し悪しのジャッジを含めて、インサイドセールス部隊がやるのでしょうか?』という質問です。
私はインサイドセールス業界の方と色々お話しする機会があるのですが、傾向として、スクリプトを作らないのがマジョリティーのように思っています。

先程、インサイドセールスに求められる人材像は何かという質問に対して、皆様に傾聴力と質問力とお答えいただきました。
スクリプトがあるとそれを読んでしまいます。読むとCIAではなくなり、素人の質問クエスチョネラーみたいになってしまうので、何を聞き出すのかの質問フロー、必須説明事項の箇条書きを用意し、ルールを決め、これに従ってやりましょうというのが多い印象です。皆様いかがですか?

内山氏
今の回答には半分同意で、半分ノーです。というのは、會田さんが仰ったインサイドセールスは顧客醸成型のインサイドセールスのタイプです。自社のサービスを習得されていて、顧客を醸成していく方向性のインサイドセールスの場合には、各自の能力でやっていただいた方が良いです。
ただし、その前段階のお客様を発掘する領域は、トークスクリプトを作った方が良いと思います。ちなみにSalesforce社はトークスクリプトを作っていないようです。それはタイプが真ん中だからです。新規開拓型に近い部分のインサイドセールスをする時には、同一トークで、同一レベルのリードで創出したアポイントを供給していく方が良いです。スタッフごとにバラバラになると、供給するアポの質がバラバラになってしまう懸念があります。なので、新規開拓型のインサイドセールスはスクリプトをお作りになった方がいいと思います。

會田
ありがとうございます。その上でどの様にスクリプトを作り、改善活動を行ったら良いのでしょうか。

内山氏
トークスクリプトを作る際は、目的によって特徴が変わります。まず、リード蓄積を目的とした場合のトークスクリプトでしたら、お客様の興味を高めるために、将来できることをイメージさせるようなことを話します。
折角のコンタクトですから、いきなり商品の細かい説明をしたいと思われるかもしれませんが、お客様は覚えていません。まずは導入後の世界観を見せるのが始まりです。その後、情報は取れていきます。段階を踏んで2回目のアプローチ、3回目のアプローチにはどの様なことを話していくのかというシナリオを作っていくのが一番良いように思います。
それと、必ず記録をとってください。何件アプローチした結果、何間くらいコンタクトを取れたのかというのは常に見ながら数字分析します。少しでも落ちてきたら、トークを変えます。そうしたことを日々繰り返さないと、インサイドセールスは良くならないですね。

秋谷氏
そうですね。内山さんが仰っているように、基本的に前工程の部分はスクリプトで行うことが我々も多いです。顧客醸成型になってくると、分岐や、話すこともパターン化ができないくらいになりますので、スクリプトをつくるケースは減ります。
ただ、やはり会話内容や質問内容についてのPDCAは必ず回しています。

阿部氏
私たちも前工程はトークスクリプトをしっかりして、顧客醸成型の部分はこんなことを聞きましょうという形です。あとはインサイドセールスをしているときにお客様について知っていることというのが結構大事なので、why you? why now?という 「今なんで、あなたとお話ししたいのか」をお伝えしています。
実際に弊社が社内のインサイドセールスで使っている手法ですが、弊社ではリードが入ってきた際の対応に様々なシナリオが設けられています。
弊社はForcasさんと連携しており、獲得したリードに例えば高成長企業です、海外展開を積極的にやっています、といったフラグが立ちます。担当者はこの情報を見ながら、「御社はかなり高成長で海外展開されているので、是非弊社と〜」のようにカスタマイズします。そのようにアプローチしていくと、相手方は「この人知ってるな!」と感じます。スクリプトではいくつかの項目を空き情報にしておいて、Forcasのデータを見ながら話すようにしています。

會田
ありがとうございます。

第3回に続く
次回テーマ「MAを選ぶ際にどのように選べばいいか?」