オンボーディングとは、新入社員および中途社員に対して、職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の受け入れプロセスのことを言います。オンボーディングを実施することで、早期離職を防止して従業員の定着率を上げることができます。
実際にオンボーディングは、どのように行えばよいのでしょうか?この記事では、企業事例を踏まえながらオンボーディングのやり方をご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
オンボーディングを実施する企業事例
まずは、オンボーディングを実施している企業事例をご紹介します。
基礎スキルプログラムを提供(サイボウズ株式会社)
サイボウズ株式会社では、新卒社員・中途社員に向けて、入社3ヵ月で営業職として独り立ちできる基礎スキルプログラムを提供しています。
営業組織や取り扱いサービスのインプット、アウトプットの機会を設けています。その後に、先輩社員の商談に同席して、段階的に慣れていき実演を交えて経験していくプログラムが用意されているのです。
このプログラムの受講時には、雑談時間が設けられており、その日の業務で分からなかったことを質問できる場が設けられています。この基礎スキルプログラムを提供することで、短期間で即戦力となる人材を育成できています。
【新卒社員向け】育成ハンドブックを提供(株式会社カケハシ)
株式会社カケハシでは、新卒社員向けに育成ハンドブックを提供しています。同社では、新卒社員を受け入れる準備が必要だと捉えており、育成ハンドブックには何年後にどのような姿になって欲しいか具体的に記載されています。
新卒社員の未来の姿を言語化することで、育成方針が共有され、新入社員の離職防止につながっています。
【中途社員向け】オンボーディングプログラムを提供(日本オラクル)
日本オラクル株式会社は、毎年300名の中途社員を雇用しています。従来は3日の研修を行い現場に出せていましたが、中途社員が成果を出せず組織に馴染めず離職してしまう課題が上がっていました。この問題を解決するために、オンボーディングプログラムを作成したのです。
中途社員に対する意識改革をし、5週間の研修を実施するようになりました。オンボーディングプログラムでは、組織のルールやオラクルの基礎を学び、その後にトレーニングによる実践をします。
オンボーディングプログラムを実施するようになってから、社員満足度が上がり離職防止に効果が出ています。
(参考資料:離職防止の知恵袋「オンボーディングの取り組み事例3選|対象者別に厳選して紹介」)
オンボーディングのやり方【基本】
オンボーディングの施策は、「インフォーム施策」「ウェルカム施策」「ガイド施策」の3つの分類できます
インフォーム施策
インフォーム施策とは、新入社員に対して情報や道具を提供することをいいます。インフォーム施策は「コミュニケーション」「リソース」「トレーニングプログラム」に細分化できます。
(1)コミュニケーション:新入社員とのコミュニケーションを促進する
- 上司に質疑応答できる場を設定する
- 上司は新入社員のためにまとまった時間を確保しておく
- 人事担当者と顔を合わせておく
(2)リソース:新入社員が利用する道具を提供する
- 新入社員の成長計画を考えてあげる
- 会社全体で使用しているマニュアルを与える
- 重要な取引先と連絡先のリストを教える
- 社内の重要な人物をリスト化して伝える
- ワークスペースを準備する
- 業務に必要な道具を供給する
(3)トレーニングプログラム:スキルや知識を獲得するためのプログラムを提供する
- 新入社員用の動画を見せる
- 先輩の仕事を観察する場を設ける
- OJTを受けさせる
- 会社の施設を見学させる
- 仕事に精通している先輩の補助をしてもらう
ウェルカム施策
ウェルカム施策とは、新入社員を歓迎したり、同僚が顔を合わせる機会を提供したりすることをいいます。新入社員の感情面や人間関係の構築に作用します。
- 上司から個人的な歓迎の手紙やメールを送る
- 入社を祝うためのプレゼントを用意する
- 同僚を知るためのオリエンテーションを計画する
- 歓迎ランチや交流イベントを設ける
- 新入社員の歓迎会を開催する
- 新入社員の入社をアナウンスする
ガイド施策
ガイド施策は、新入社員のキャリア発達をサポートすることをいいます。
- 地位の高い人をメンター役に割り当てる
- 質問があれば相談できる相手を割り当てる
- メンター制度を設けて、新入社員の疑問を解消できる体制を整えておく
(参考資料:「組織になじませる力-オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ」)
新卒社員へのオンボーディングのやり方
新卒社員のオンボーディングを実施する場合は、リアリティ・ショック(入社への期待と職務体験による厳しい現実の差で失望すること)の対策を講じなければいけません。
正確な情報を提供する
新卒社員のリアリティ・ショックを防止するために、正確な情報を提供しましょう。入社後にどこに配属されて、どのような先輩とどのような業務に携わるか不透明なままでは、リアリティ・ショックが生じやすくなります。そのため、新卒採用の際には正確な情報を提供しましょう。
■正確な情報とは
正確性 | 大変な面やネガティブな面を伝える
知っておくべき情報を提供する |
信頼性 | 誰が情報発信すれば信頼性が高まるかを考える
会社の将来性や経営戦略:社長 実際の仕事内容:先輩社員 求める人物像や福利厚生:人事担当者 |
正直さ | 不確実性の高いことは「決めていない」と正直に答える |
トランジション・スロープをかける
新卒社員の内定後に、リアリティ・ショック対策をするためには、学生から社会人へキャリアを円滑に移行させるために、サポートしてあげることが求められます。これをトランジション・スロープといいます。具体的な施策としては、以下のようなものがあります。
- 内定者インターンシップの実施
- 入社前の研修
ケアリング施策をする
入社後のリアリティ・ショックは簡単に抑えることはできません。そのため、入社後もリアリティ・ショックの対策としてケアリング施策を実施しましょう。ケアリング施策として以下のようなものがあります。
- キャリアカウンセリング(相談窓口)を用意する
- メンター制度を導入する
- キャリアアップの教育制度を充実させる
- ジョブ・デザインを手掛けてあげる
- ショック療法を行う
(参考資料:「組織になじませる力-オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ」)
中途社員へのオンボーディングのやり方
中途社員も早期戦力化させるために、オンボーディングに力を入れましょう。ここでは、中途社員へのオンボーディングのやりかたをご紹介します。
中途社員の捉え方を変える
まずは、中途社員の捉え方を変えましょう。職場が変われば、仕事のやり方や関わる人、役割などが前職と大きく変わります。この変化を受け入れるためには、周囲のサポートが必要です。
多くの企業では、新卒社員向けの教育は充実していますが、中途社員向けの教育は充実していないケースが多いです。そのため、中途社員は何もしなくても当たり前のように即戦力になるという考えを改めて、中途社員にも教育は必要だと認識するようにしましょう。
中途社員向けの研修を実施する
中途社員向けの研修を実施しましょう。研修内容におすすめなのが、製品情報の基本的な知識を学べる研修を用意することです。社会人経験がある中途社員でも、転職すれば仕事内容が変わります。製品に関する情報など基本的な知識がなければ、パフォーマンスを発揮することができなくなります。
サポート役を割り当てる
中途社員が離職しないようにサポート役を割り当てましょう。新しい職場に入社したら、最初から1人で業務をするのは困難です。頼れるサポート役が必要になります。業務上で困ったことが出た際に聞けるサポート役がいれば、安心して業務に携われます。このような安心感を与えることが、職場への定着には必要です。
定期的に面談を実施する
中途社員には、定期的に面談を実施することも効果的です。上司との面談では、仕事面でのミスマッチを防止して、精神的プレッシャーを取り除くことが求められます。
その一方で、人事担当者との面談では、仕事の不満などを取り除くことが求められます。このような相談ができる環境を整備することで、中途社員の離職が防止できます。
上司や先輩への教育を実施する
中途社員のオンボーディングは、上司や先輩社員の受け入れ側を教育することも重要です。中途社員は即戦力になるから、大して指導しなくても大丈夫だという認識を持ってしまうと、中途社員にプレッシャーをかけてしまうことになります。そのため、上司や先輩社員の意識改革をして、中途社員を受け入れる準備をする必要があります。
(参考資料:「組織になじませる力-オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ」)
まとめ
今回は、新入社員のオンボーディングの方法をご紹介しました。オンボーディングを実施する場合は、基本を押さえた上で、新卒社員と中途社員向けのやり方を覚えて実施することが大切です。
【オンボーディングの基本】
インフォーム施策 | 新入社員に対して情報や道具を提供する |
ウェルカム施策 | 新入社員を歓迎したり、同僚が顔を合わせる機会を提供したりする |
ガイド施策 | 新入社員のキャリア発達をサポートする |
【新卒社員のオンボーディングのコツ】
- 正確な情報を提供する
- トランジション・スロープをかける
- ケアリング施策をする
【中途社員のオンボーディングのコツ】
- 中途社員の捉え方を変える
- 中途社員向けの研修を実施する
- サポート役を割り当てる
- 定期的に面談を実施する
- 上司や先輩への教育を実施する
ぜひ、これを機会にオンボーディングの方法を見直してみてください。